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トヨタも採用する「バイポーラ型電池」、出力を向上できる仕組みとは今こそ知りたい電池のあれこれ(7)(1/3 ページ)

今回は、「バイポーラ型電池」とは何か、これまでの電池と何が違うのかといった点を解説していきたいと思います。

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 2021年7月19日、トヨタ自動車はハイブリッド車(HEV)「アクア」をフルモデルチェンジして発売しました。この新型アクアが「バイポーラ型ニッケル水素電池」を世界初搭載していると報道され、各所で大きな話題となりました。また、2021年9月7日に開催されたトヨタ自動車の「電池・カーボンニュートラルに関する説明会」の中でも、今後バイポーラ型ニッケル水素電池の搭載車両を拡大していくことが明らかになりました。

 今回は、この「バイポーラ型電池」とは何か、これまでの電池と何が違うのかといった点を解説していきたいと思います。

→連載「今こそ知りたい電池のあれこれ」バックナンバー


アクアの新モデルに搭載されたバイポーラ型ニッケル水素電池[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

バイポーラ型とはどのような構造なのか

 「バイポーラ」(Bipolar:双極)という名前が意味するのは、正極と負極の2つの電極を併せ持った電池構造です。従来、正極や負極はそれぞれ独立した電極板として電池を構成していました。バイポーラ型電池では、1枚の「集電体」の片面に正極、もう一方の面に負極を塗布した電極板を採用しています。


従来の構造とバイポーラ型の比較[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

 従来型の電池と比べると、電極を構成する集電体を始め、複数のセルを連結するための端子、各セルを区分けする筐体など、必要な部品点数が少なく、よりコンパクトにできるのが特徴です。その結果、従来型の電池と同等サイズであれば、バイポーラ型の方がより多くのセルを搭載することが可能です。

 また、バイポーラ型電池の大きなメリットは電池の内部抵抗を低減できることです。従来型の電池が複数のセルを端子で連結しているのに対し、バイポーラ型の電池は内部で複数セルが直列に積み重なった状態と見なすことができます。電気抵抗は通電距離に比例し、面積に反比例するため、電極塗布部の面積分を電流の通過経路とし、最短距離で接続することができるバイポーラ型電池は、電池内の抵抗を大きく低減し、電池出力の向上が可能となります。

 トヨタ自動車が新型アクアに搭載したバイポーラ型ニッケル水素電池の場合、従来型ニッケル水素電池に比べると[セル当たり出力約1.5倍]×[コンパクト化により同じスペース内に1.4倍のセル]を搭載した結果、約2倍の高出力を実現したとの公式発表がなされています。

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