日立のAGV「Racrew」が躍進、サントリー最新工場の自動化も担う:無人搬送車(1/3 ページ)
製造業や物流業を中心に需要が高まるAGV(無人搬送車)。日立はこのAGV市場で2014年から「Racrew」を展開。サントリーグループのサントリー<天然水のビール工場>京都とサントリー天然水 北アルプス信濃の森工場の2工場が、このRacrewを採用して自動化を推進している。
製造業や物流業を中心にAGV(無人搬送車)の需要が高まっている。もともと、少子高齢化などによって人手不足が課題になっていたこれらの産業分野の自動化を進めるために導入が検討されており、さらにコロナ禍によって非接触が求められるようになってその流れは一気に加速しつつある。
このAGV市場での事業展開を強化しているのが日立製作所(以下、日立)である。現在のAGV需要の高まりに先駆ける形で、2014年9月の「国際物流総合展2014」で小型・低床式のAGV「Racrew(ラックル)」を初披露し、以降7年間で20サイト以上、1000台以上(システム構築中を含む)の納入実績を重ねている※)。
※)現在のRacrewの事業展開は日立インダストリアルプロダクツが手掛けている。
2014年9月の初披露時は、小型で低床の特徴を生かした、部品や商品が保管されている棚を搬送するピッキングシステム向けを主な用途に据えていた。しかし、日立 産業・流通ビジネスユニット デジタルソリューション事業統括本部 ソリューション&サービス事業部 ロジスティクス事業推進本部 主任技師の池田暁治氏は「当初から工場の搬送システムなどで利用できるような規格で設計していた。これにより、倉庫だけでなく工程間搬送用途での展開も2016年から開始できている」と語る。
搬送システム向けのRacrewの特徴は3つある。1つ目は「スペース効率の高さ」だ。搬送物の下に潜り込んで搬送するとともに、旋回時に搬送物を支えるパレットを回すことなく車体のみの旋回が可能なので、搬送ラインを省スペースで構成できる。2つ目の「走行エリアの清掃性が向上」は、走行ラインを示すマーカーの数が最小限で済むことによるものだ。そして3つ目は「他システムとの直接取り合いが可能」な連携のしやすさだ。日立が提供するWCS(倉庫制御システム)は、自動倉庫(コンベヤー)、垂直搬送機、自動シャッターなど各種マテハンシステムとの連動実績が豊富であり、信号取り合いが容易である。
このRacrewの最新の採用事例になるのが、飲料大手であるサントリーグループの2工場だ。サントリービールのサントリー<天然水のビール工場>京都(京都府長岡市)は2019年から運用しており、2021年春に稼働したサントリープロダクツのサントリー天然水 北アルプス信濃の森工場(長野県大町市)でも採用された。
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