日立のAGV「Racrew」が躍進、サントリー最新工場の自動化も担う:無人搬送車(2/3 ページ)
製造業や物流業を中心に需要が高まるAGV(無人搬送車)。日立はこのAGV市場で2014年から「Racrew」を展開。サントリーグループのサントリー<天然水のビール工場>京都とサントリー天然水 北アルプス信濃の森工場の2工場が、このRacrewを採用して自動化を推進している。
「Racrew」の導入で生産ラインのほとんどを無人化
サントリー<天然水のビール工場>京都では、缶チューハイをはじめ購入後にそのまま飲めるRTD(Ready to Drink)品の生産ラインにおける原材料保管、搬送、自動投入でRacrew10台と日立のWCSを用いている。「Racrewの導入により、生産ラインのほとんどを無人化できるようになった」(池田氏)という。
同工場では、まず入庫ステーションで受け入れた原料は棚に配置され、Racrewがこれらの棚を保管場所まで搬送する。原料は生産ライン投入前までここで保管される。生産ライン投入前の段階で、これらの原料が配置された棚はRacrewによって「仕分けステーション」に搬送される。仕分けステーションでは、作業員が計量器を使って原料を専用の容器に仕分けた後、ハンドリングロボットが専用容器を投入用保管棚に配置する。投入用保管棚もRacrewでいったん保管場所に搬送されるが、生産ラインに投入する際には再びRacrewがピッキングステーションまで搬送する。ピッキングステーションでは、ハンドリングロボットが原料の入った専用容器のふたを治具を使って取り、原料を生産ラインに投入する。
この一連のプロセスで人が介在するのは、最初の入庫ステーションにおける原料受け入れと、仕分けステーションにおける計量と専用容器への仕分けだけで、それ以外はRacrewとハンドリングロボットにより無人化、自動化されているのだ。使用されている保管棚は84台、ピッキングステーションは5カ所だ。
生産ラインの自動化で鍵になっているのが、ハンドリングロボットが保管棚から専用容器をピッキングする際の位置補正だ。池田氏は「Racrewは棚の下に潜り込んで搬送を行うが、Racrewと棚の相対位置は搬送ごとに微妙にずれる。また棚の重さやバランス、走行状況などによって、ハンドリングロボットの前で停止する位置誤差が生まれる。そこで、Racrewと棚の間で発生する誤差は、Racrew上部に設置したカメラと棚下部に付けたQRコードで、Racrewの停止位置の誤差は走行用のマーカーを使って補正し、原料容器を正確にハンドリングできるようにしている」と説明する。
また、棚に配置されている液体が重量物であるとともに慣性によって重量バランスが変化することにも対応し、走行や旋回、停止などの各動作についても調整を施しているという。
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