日立のAGV「Racrew」が躍進、サントリー最新工場の自動化も担う:無人搬送車(3/3 ページ)
製造業や物流業を中心に需要が高まるAGV(無人搬送車)。日立はこのAGV市場で2014年から「Racrew」を展開。サントリーグループのサントリー<天然水のビール工場>京都とサントリー天然水 北アルプス信濃の森工場の2工場が、このRacrewを採用して自動化を推進している。
“見せる工場”向けにラッピング対応も
一方、サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場では、生産ラインから出てくる廃棄品や副資材の搬送を自動化する目的でRacrewが採用された。サントリー<天然水のビール工場>京都では保管棚の搬送に用いられていたのに対して、搬送するアイテムが多岐にわたるとともに複数の荷姿があるため、専用棚、3種類の専用架台、パレットを搬送する必要があった。専用棚ステーションは79カ所、専用架台ステーションは50カ所、パレットステーションは17カ所あり、総計140カ所以上のステーション間での搬送を5台のRacrewが担っている。
まず、専用棚で行っているのはサンプル品の保管になる。ミネラルウオーターなどのペットボトル飲料は、品質管理のため生産ロットごとにサンプルを抜き取って保管する必要がある。これら多数の「キープサンプル」の保管場所への搬送や、保管場所から抜き取り試験などを行う試験室への搬送などを行うのにRacrewが用いられている。
3種類の専用架台とパレットは、生産ラインから出た廃棄品の他、生産に必要な器具やペットボトルの型替部品などの搬送に用いられている。中でも廃棄品については、従来の生産ラインでは人手で運んでおりその重労働が課題になっていた。池田氏は「廃棄品とはいえ、中に液体が入ったペットボトル飲料が多数入った廃棄コンテナを人手で運ぶのはかなり大変だ。もちろん中身が空のペットボトルを運ぶこともあるが、重くはなくてもかさばるので労働負荷が低いとはいえない。Racrewでこの廃棄品の搬送を24時間体制で自動化できるようになった」と述べる。
サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場のRacrewで興味深いのは、ボディーカラーがいわゆる「サントリーブルー」で彩色されているとともに、それぞれ異なる柄でラッピングが施されていることだろう。「来場者に“見せる工場”を目指していることもあり、各所でさまざまな作業を担うRacrewについても、通常カラーのアイボリーからカスタム対応した」(池田氏)という。
WCSなどと組み合わせたソリューション提供が強みに
サントリーの2工場をはじめ、Racrewの工場内搬送システムとしての採用は現時点で5サイトにとどまる。池田氏は「物流倉庫の採用事例のうち製造業向けが半数を占めている。工場におけるAGV需要の高まりを考えれば、物流倉庫での実績をてこに今後大きく伸ばしているいけるのではないかと考えている」と強調する。
また、Racrewの強みとなるのが、AGV単体の機能にとどまらないWCSなどと組み合わせたソリューション提供だ。2000年ごろからWMS(倉庫管理システム)の一機能としてWCSを投入しており、そういったソリューション提供か可能なAGVメーカーは多くはない。「今後は、日立が推進するロボットSI事業と連携しながら、スマートファクトリー向けの展開を強化していく」(池田氏)としている。
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