日立がロボット事業に参入する理由は「高度なシステム化力」:産業用ロボット(1/2 ページ)
日立製作所は、東京都内で開催したプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」において、同社が注力しているロボティクス技術についての展示を行った。
日立製作所(以下、日立)は、東京都内で開催したプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」(2019年10月17〜18日)において、同社が注力しているロボティクス技術についての展示を行った。
「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」で展示したロボットの実機を使った展示。これほど大規模なロボットの展示を行うのは同イベントでも初めての試みだという(クリックで拡大)
日立グループでは、日立産機システムが同年4月に国内ロボットシステムインテグレーター(ロボットSI)のケーイーシーを買収。続けて同月には、日立が米国ロボットSIのJR Automation Technologies(JRオートメーション)の買収を発表している(2019年内に買収を完了する予定)。産業用ロボットメーカーではなく、ロボットSIを買収している狙いは、今回のロボティクス技術の展示に掲げられた「企業経営とバリューチェーンの高度化に寄与するロボティクス」という言葉にが表している。
日立 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 事業部長付(ロボット事業担当)の澤田昌文氏は「モノづくりの現場は、これまでの人中心から、ロボットを活用した完全自動化へと進んでいくだろう。自動化が進むとソフトウェアの重要度はより高まっていくが、これと併せてハードウェアとソフトウェアをとりまとめるシステム化力が求められる。モノづくりの現場でOT(制御技術)とIT、プロダクトを組み合わせてソリューションを提供している日立は、高いレベルのシステム化力があり、だからこそロボット事業に参入する意義がある」と語る。
日立自身が手掛ける産業用ロボット製品は、AGV(無人搬送車)の「Racrew(ラックル)」などにとどまる。しかし、今後推進していくロボット事業では、企業経営とバリューチェーンの高度化を大きな目的として、システム技術とソフトウェア技術を中核に置き、グループ企業である日立産機システムや日立インダストリアルプロダクツ、先述のロボットSIなどを含めたパートナー各社と連携しながらトータルインテグレーションを進めていく必要がある。
ロボットシステムをひとかたまりにした「セル」を提案
今回のロボティクス技術の展示は、多軸ロボットとKyoto Roboticsの3Dビジョン技術によるばら積みピッキング、パラレルリンクロボットと安価な3Dセンサー、日立が開発した深層学習(ディープラーニング)アルゴリズムによる高速商品仕分け、そしてAGVのRacrewによる製品の搬送という3つのシステムを組み合わせたものになっている。
3つのシステムを組み合わせる上で重要なコンセプトになっているのが、それぞれの作業を担うロボットシステムをひとかたまりにした「セル」である。今回の展示を構築する上では、あらかじめシミュレーターによる協調動作設計を行っており、会場内でのインテグレーションはその設計内容に基づいて行い、問題なく動作させることができたという。「あらかじめセルという単位にしておくことで、高精度なシミュレーションが可能になり、現場でのシステム構築でも手戻りがほぼなかった」(澤田氏)。
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