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製品が簡単に壊れると、ユーザーはがっかりしませんか?ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル(5)(3/3 ページ)

連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」では、「オリジナルの製品を作りたい」「斬新なアイデアを形にしたい」と考え、製品化を目指す際に、絶対に押さえておかなければならないポイントを解説する。連載第5回では、信頼性の試験内容をどのようにして見つけ出すか/自分で考えるかについて取り上げる。

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JISに規格がなく、試験方法を一から考える方法

 ここまでの内容はJISなどに規格があり、試験方法を調べられるものだ。JISに規格がない試験内容に関しては、次のようにして試験方法を決めるとよい。

 信頼性とは「与えられた条件下で与えられた期間、要求機能を遂行できること」である。よって、与えられた条件下で与えられた期間にわたって試験を行い、要求機能を満足すればよいのだ。

 まずは、前述のように製品の壊れる可能性があるリスクをピックアップする。次に、「与えられた条件下」を考える。室内で使用する製品であれば室内の室温と湿度、また雨天の野外で使用するなら降り注ぐ水滴、自動車の中なら真夏の高温や走行中の振動などがある。

さまざまな条件下で使用されることを想定して、試験内容を考える
図4 さまざまな条件下で使用されることを想定して、試験内容を考える[クリックで拡大]

 「与えられた期間」とは、製品の想定する使用年数である。よって、例えばカーナビゲーションシステム(カーナビ)であれば、自動車の車内を想定した温度と振動のある環境で使用年数の期間にわたって試験を行い、要求仕様を満足できるかを確認するのである。しかし、実際の使用年数の期間ずっと試験をすることはできないため、加速試験を行う。車内であれば、温度や湿度を上昇させて試験期間を短くする方法である。

 駆動もしくは変形する部分のある製品に関しては、ユーザーが製品を使用する状況を考えて、耐久性と耐荷重を確認する試験が必要だ。耐久性は、1日の駆動回数を想定してそれに使用年数を掛けた回数を駆動して試験すればよい。耐荷重に関しては、想定する荷重を負荷して試験する。

 製品には材料や組み立てのバラツキがあり、製品の使用方法にもバラツキがある。また、試験する試験機にもバラツキがある。よって、それらのバラツキを考慮し、温度や振動、回数、荷重などには安全率を見込んで試験条件を考えなければならない。 (次回へ続く

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書

製品化 5つの壁の越え方: 自社オリジナル製品を作るための教科書中国工場トラブル回避術 原因の9割は日本人

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