トヨタの国内工場で進む「次世代EVの準備」と、「匠の技の継承」:メイドインジャパンの現場力(40)(3/3 ページ)
トヨタ自動車は貞宝工場や元町工場、明知工場でのモノづくりの取り組みを発表した。
金属向けのインクリメンタル成形を樹脂バンパーに適用することにも元町工場で成功した。インクリメンタル成形は棒状の工具を連続的に材料に押し付けて成形する工法。バンパーに加工を施すことで、シームレスなデザインと空力性能を向上させるカナード(エアロパーツの一種)一体のバンパーを実現した。
シャープなキャラクターラインを成形するレーザー加工技術も手掛ける。プレス成形後に追加でレーザー加工を施すことで、プレス成形では難しいシャープなラインを実現する。レーザー加工技術の蓄積を生かした出力の微調整で、線の通り方や消え方の細部までこだわる。
元町工場は、EVやHEV、FCV(燃料電池車)、エンジン車などさまざまなパワートレインや、セダン/ミニバン/SUVのように異なる車両タイプの製品を同一ラインで生産している。サイズの異なる車両の組み付け作業を行うため、作業位置の高さを柔軟に変更できる移動式踏み台を使用し、作業者の負荷低減や作業品質の向上を図っている。また、組み立てラインでは床面の色を黄色と緑に塗り分け、安全性や作業効率を高めた。地道な改善活動や品質教育、リーダーの育成、多能工化などの人材育成も混流生産ラインを支えている。
モノづくりのカーボンニュートラル化に向けて、からくりを使った無動力装置の活用など日常の改善や、塗装工程をコンパクト化するエアレス塗装技術などモノづくりの革新、再生可能エネルギーや水素の活用なども元町工場で推進中だ。
物流の課題解決にも元町工場で取り組んでいる。「Vehicle Logistics Robot(VLR)」という車両搬送ロボットを導入し、完成車ヤードでの車両運搬における慢性的な人手不足や、屋外の長い歩行を伴う作業負荷の軽減といった課題の解決を進めている。
VLRは車両の床下に潜り込んでタイヤを持ち上げて車両を荷台に搭載する。サイズが異なる車両でも搭載できるよう、車高やホイールベースに応じて荷台を昇降、伸縮することで汎用性を持たせた。高精度に自律走行できるだけでなく、管制システムが複数台のVLRを一括管理することで、安全を確保しながら最適経路で搬送する。作業者による運搬はドアの開け閉めが必要だが、VLRは隙間なく車両を配列できるため、ヤードの効率的な活用にも貢献する。
この他、全国の工場や港の積み込み荷下ろし場には屋根を設置し、悪天候でも安全に作業できるようにした。完成車物流を含め、物流業界はドライバーの労働時間規制の厳格化による輸送能力の縮小やドライバーや運搬作業者の高齢化、離職率の高さなどによる慢性的な人手不足などが課題となっている。負荷軽減や安心して働ける環境の整備が急務だとしている。
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