空飛ぶクルマ、建機、船舶……さまざまなモビリティで電動化が進展:電動化
富士経済はさまざまな電動モビリティの市場調査結果を発表した。建設機械や二輪車、船舶、航空機、いわゆる空飛ぶクルマなど四輪車以外のモビリティ15品目を対象に調査した。
富士経済は2023年8月1日、さまざまな電動モビリティの市場調査結果を発表した。建設機械や二輪車、船舶、航空機、いわゆる空飛ぶクルマなど四輪車以外のモビリティ15品目を対象に調査した。
VTOL(垂直離着陸機)などを含む空飛ぶクルマは、ビジネスジェットやヘリコプターなどよりも少人数で低高度を飛行する、短距離移動のモビリティだ。旅客輸送や無人物流への展開が期待されているという。現在は試験機での認証取得活動が行われており、2025年ごろから商用利用が始まる見通しだ。完全電動式とハイブリッド電動式の展開が見込まれる。
まずは災害支援や遊覧飛行などヘリコプターの代替需要で市場が形成され、中期的には地方の旅客輸送や物流で、長期的には都市部のタクシー代替や物流などでのオンデマンド利用に広がるという。日本は陸上インフラの交通量が多いため、時間短縮でのニーズが大きいと予測する。2040年の市場規模は4万機としている。
シニアカーや電動キックボード、ゴルフカートなどスローモビリティの市場は、2040年に2022年比3.0倍の596万台に拡大すると見込む。このうち電動キックボードが495万台で、同3.5倍に成長するという。電動キックボードは、シェアリングサービスが世界的に普及したことで市場が大きく伸びている。シニアカーは高齢者人口の増加で需要が高まるとしている。スローモビリティは2022年時点で95%が電動化されており、2040年には電動化率が98%以上になると予測している。
電動モビリティで使用した電池を充電済みの電池と交換するバッテリーシェアリングやバッテリースワップの市場は、2040年に2022年比19.8倍の1兆1005億円に拡大する見通しだ。現在は二輪車での導入が先行しており、中国や台湾、インドネシア、インドなどで市場が形成されている。日本でも、二輪車メーカー4社がバッテリーシェアリング会社を設立した。短期的には法人利用が中心だが、個人向けの電動二輪車の販売拡大に合わせて市場が拡大する見込みだ。シニアカーなどスローモビリティでのバッテリーシェアリングが広がることも予想されるという。
これから電動化が進むモビリティ
現在、四輪車以外のモビリティは非電動式が市場の7割を占めているが、排ガス規制対策で完全電動式やハイブリッド電動式の需要が伸びる。2040年には、完全電動式が2022年比2.7倍の6213万台、ハイブリッド電動式が同14.8倍の89万台と予測する。非電動式は2022年比31.6%減に縮小して3757万台と見込む。
現時点で完全電動式が普及しているのは、配達や配膳のロボット、スローモビリティ、ドローン、AGV(無人搬送車)などだ。これに対し、建設機械や農業機械は非電動式が主流で、今後電動化が進む。ハイブリッド電動式は、外航船や内航船で2025年以降に採用が増えそうだ。外航船は航続距離が長いことから、燃料電池と二次電池の併載や、カーボンニュートラル燃料の活用が検討されている。航空機は、エネルギー密度やコストの面で電動化は限定的になる見通しで、持続可能な航空燃料(SAF)の利用がメインになる見通しだ。
電動モビリティの増加を受けて、リチウムイオン電池やモーターをはじめとする関連デバイスの市場も成長する。リチウムイオン電池は、フォークリフトや二輪車から建設機械や農業機械に採用が広がる。次世代電池は、ドローンや二輪車で採用が始まり、空飛ぶクルマや航空機、船舶に用途が拡大しそうだ。燃料電池は、出力の高さや採用実績が搭載を後押しする。フォークリフトや鉄道車両で採用事例がある他、船舶や物流向けのドローンなどでも採用が期待できるという。
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