ホンダが「空飛ぶクルマ」、ガスタービンのシリーズハイブリッドで航続距離4倍に:研究開発の最前線(1/3 ページ)
本田技術研究所は2021年9月30日、新領域の技術開発の取り組みを発表した。公開したのは「eVTOL(電動垂直離着陸機)」「多指ロボットハンド」「循環型再生エネルギーシステム」の3つだ。“ホンダのコア技術”と位置付ける燃焼、電動化、制御、ロボティクスの技術を活用する。
本田技術研究所は2021年9月30日、新領域の技術開発の取り組みを発表した。公開したのは「eVTOL(電動垂直離着陸機)」「多指ロボットハンド」「循環型再生エネルギーシステム」の3つだ。“ホンダのコア技術”と位置付ける燃焼、電動化、制御、ロボティクスの技術を活用する。また、いずれの領域の開発においても人々の生活から時間や空間、距離による制限をなくし、人が活躍できる時間や空間を広げていくことを目指している。
eVTOLはクルマよりも短時間で長距離を移動できる新たなモビリティとして需要を見込んでおり、動力源にガスタービンで発電した電力を使用することで、バッテリーのみで駆動する他社のeVTOLよりも航続距離を大幅に増やす。2020年代半ばに事業化するかどうかを判断し、2030年代初めの認定取得を目指す。
多指ロボットハンドは、自分自身の分身のように活動する「アバターロボット」の一部と位置付けている。ロボットハンドで人間の手のように細かな作業を行えるようにし、アバターロボットを通じて遠隔地でもその場にいるように活動することを目指している。「ASIMO」でもロボットハンドを開発してきたが、人間の手と同等の繊細さと力強さの両立に向けて進化させる。アバターロボットは2023年度中に技術実証を開始し、2030年代の実用化を目標とする。
循環型再生エネルギーシステムは宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究だ。宇宙で人が長期間にわたって滞在、活動するための環境構築に貢献する。高圧水電解システムと燃料電池で構成されており、燃料電池で発電して電力を得るとともに、電気分解によって得た水素と酸素を貯蔵して酸素を居住空間用、水素をロケット燃料用に使えるようにする。この他にも、月面で活動するロボット向けの遠隔操作技術や、小型ロケットも開発を進める。小型ロケットの開発は2019年末からスタートしており、現在はエンジンの燃焼試験を実施中だという。
「ホンダは普通では認めてもらえない」
ホンダ 代表取締役社長の三部敏宏氏は、2021年4月に開いた社長就任会見において、「モビリティを3次元、4次元に拡大していくべく、空、海洋、宇宙、そしてロボットなどの研究を進めている。先進・先端技術へのリソースはしっかり確保し、独創的な技術研究を強化していく」と述べた。今回発表したeVTOLやアバターロボット、小型ロケットや宇宙向けの循環型再生エネルギーシステムは、その具体例だ。
本田技術研究所 代表取締役社長の大津啓司氏は「ホンダは数々のチャレンジを重ね、新技術や新製品で存在価値を高めてきた。ホンダは、普通であることは期待されていないし、普通では認めてもらえない。常にチャレンジャーでいなければならない。そうあるために一人一人が活躍できる環境にしていきたい」と語る。
また、本田技術研究所 先進技術研究所 新モビリティ研究ドメイン統括フェローの川辺俊氏は「モノを作っていいモノができたけれども、コストが高すぎるとか、ユーザーが欲しいものとは少し違ったために市場に届かないということが多かった。この反省もあり、今は実際にお客さまに“届ける”ということを意識した技術開発を進めていく。eVTOLなども、実際に使ってもらえることを前提に開発している」とコメントした。
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