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電動キックボードの“汚名返上”、ホンダ発ベンチャーが立ち乗り三輪モビリティ電動化(1/2 ページ)

ホンダ発のベンチャー企業であるストリーモは2022年6月13日、電動三輪マイクロモビリティ「ストリーモ」を発表した。

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 ホンダ発のベンチャー企業であるストリーモは2022年6月13日、電動三輪マイクロモビリティ「ストリーモ」を発表した。

 ホンダの二輪車の研究開発部門に所属していたエンジニアが、自宅での個人的なモノづくりからスタートし、ホンダの新事業創出プログラムを通じて起業するに至った。他の共同創設者2人もホンダ出身だ。ホンダの出資比率は20%未満となる。独立したまま事業を継続するか、ホンダの新事業としてスピンインして育成していくかは今後検討していく。

 製品は、個人向けはまず日本で300台限定の抽選販売からスタートし、2022年内に納車する計画だ。その先の一般販売については、半導体の調達などの状況を鑑みて調整していく。建設現場や工場、リゾート地、空港などでの敷地内の移動に向けても展開する。ベンチャー企業としての身軽さを生かし、さまざまな企業と交流しながら普及させていく。フランスやドイツ、米国への展開も2023年以降に始める。

ホンダ発のベンチャーが発表した電動三輪マイクロモビリティ「ストリーモ」[クリックで拡大] 出所:ホンダ

折りたたんで持ち運ぶこともできる[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 ストリーモの重量はバッテリーを含めて20kg程度。バッテリーは取り外し可能で、家庭のコンセントで充電する。1回の充電で30km程度走行できる。折りたたんで室内や車内、電車などに持ち込むことも可能だ。小回りが利くことを重視して前輪駆動とした。速度は親指が届く位置にあるレバーで調整し、自転車などと同様にブレーキレバーで減速、停止する。

 価格は、原付一種(※)に該当する300台限定の「ジャパンローンチエディション」で税込み26万円となる。敷地内の移動に使用するB2Bのユーザーには、個別の見積もりでサブスクリプション料金を設定する。

(※)要免許、ヘルメット着用義務あり、ナンバー登録と自賠責加入が必要。ジャパンローンチエディションの最高速度は時速24km。

 ホンダの社内に二輪車よりも小型のモビリティであるストリーモを生産できる設備がないことから、自転車やキックボードなど小型の電動モビリティを手掛ける台湾のパートナー企業の製造拠点(中国もしくはベトナム)で生産する。

 今後2年以内に施行される、電動キックボード関連の新法規に対応したモデルも開発中だ。歩道での走行も想定した時速6km以下の速度制御や、速度表示のインジケーターなどを備える。新法規では、運転免許が不要でヘルメットの着用義務がなくなる。自賠責の加入義務やナンバーの登録は引き続き必要だ。

ストリーモの走行の様子[クリックで再生] 出所:ホンダ

交通ルール無視、飲酒運転など悪質なユーザーの増加

 電動キックボードは手軽なシェアリングモビリティとして海外で広がり、日本でもシェアリング事業者がヘルメット着用義務のない小型特殊自動車として展開を始めた(運転には免許が必要)。ただ、歩道を走行するなど交通ルールを守らないユーザーが散見されていることを日本のシェアリング事業者自身も認めており、警察では飲酒して電動キックボードに乗る悪質な利用者の取り締まりも行われている。

 ストリーモは、シェアリング用には展開せず、クルマやバイクと同じように購入して使ってもらうことにした。ストリーモを創業した代表取締役の森庸太朗氏は、「シェアではなく所有にした。シェアリングのモビリティだと、置いてあったから、と酔っていても使う人が出てくる。あったから使うという隙間に入り込むのではなく、購入者の責任で安全に使ってもらいたい。飲むなら乗らないとか、危険な運転をしないのはクルマやバイクと同じだと考えている」と述べた。

電動キックボードの事故率は自転車の18倍

 自動車を使っていた5km以下の移動にマイクロモビリティを利用すると、年間でCO2排出を1人当たり1トン削減することができるという。地域にもよるが「5km以下の移動」は移動ニーズの過半数を占めており、CO2排出削減でマイクロモビリティが貢献できる余地は大きいとみている。マイクロモビリティ活用を後押しする動きもある。例えば、フランスでは自転車専用道路を設置するだけでなく、自動車の車線数削減や速度規制、乗り入れ規制なども推進する。

 マイクロモビリティの市場規模は2022年の約400億ドルから、2030年には4.8倍の1950億ドルに拡大すると予測されている。しかし、その一方で現在広がっているマイクロモビリティの1つである電動キックボードは、自転車の18倍の事故率となるなど事故が起きやすい。病院に搬送された電動キックボードユーザーに事故原因を調査したところ、路面の影響による転倒が6割、縁石や構造物との衝突が2割で、全体の8割が単独事故だ。電動キックボードの利用をやめた人の50%、電動キックボードを利用しない人の40%以上が、操縦の不安をその理由に挙げている。

 ストリーモを創業した森庸太朗氏も海外で電動キックボードを使う中で「いい移動体験が得られなかった」と話す。「路面のギャップではじかれて唐突に倒れたり、思わぬ形で足元からすくわれたり、どう動くか分からず安心して乗れなかった。乗り物と運転する人は対話しながら気持ちよく走れなければいけないのに、対話ができず、信用できないと感じた。どう動くのか分からないとスピードが出せない。ゆっくり走るにも、落ち着かずに足元ばかり見てしまい周りが見えなくなる。そんな風に電動キックボードに乗っている人がいると、周囲のクルマなどから挙動が読めず、嫌な対象になってしまう」(森氏)。

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