ヤマ発がドローン向けシリーズハイブリッドを開発、最長4時間の連続飛行が可能:Japan Drone
ヤマハ発動機は、「Japan Drone 2021」において、マルチコプタータイプのドローン向けに開発しているシリーズハイブリッドシステムの試作モデルを披露した。2022年に同システムを搭載するドローンの実証実験をパートナー企業と共同で進めた後、2023〜2024年をめどにシステムサプライヤーとしての事業化を目指している。
ヤマハ発動機は、「Japan Drone 2021」(2021年6月14〜16日、幕張メッセ)において、マルチコプタータイプのドローン向けに開発しているシリーズハイブリッドシステムの試作モデルを披露した。2022年に同システムを搭載するドローンの実証実験をパートナー企業と共同で進めた後、2023〜2024年をめどにシステムサプライヤーとしての事業化を目指している。
開発中のシリーズハイブリッドシステムは、同社が農薬散布用などで展開している産業用無人ヘリコプター「FAZER」に搭載する排気量400ccの4ストローク2気筒エンジンと、四輪車向けなどで実績のある電動駆動システムの技術を基に開発した小型インバーターなどを組み合わせたものだ。ユニットとしては、補助動力となるバッテリーや配線配管類などもパッケージにしている。
試作モデルの仕様は、エンジン定格出力が20.6kW(発電電力17.1kW)、使用燃料がガソリン、ユニットの外形寸法が約400×400×300mm、重量が約70kg、供給電圧が300V。連続飛行時間は最長約4時間、ペイロード(燃料+積載物)は最大約25kgを想定している。また、2021年3月には、マルチコプタータイプの大型ドローンに試作モデルを搭載しての実証実験も行っている。
マルチコプタータイプのドローンはさまざまな場面で利用されているが、電力供給源がバッテリーであるため、15〜30分など航続時間に限界があることが課題になっている。「今後需要が拡大するであろう物流などの用途では、さらに航続時間を伸ばす必要が出てくるが、エネルギー密度の問題からバッテリーをたくさん載せても航続時間を伸ばすことはできない。エンジンを発電機に用いるシリーズハイブリッドシステムであれば、バッテリーよりもエネルギー密度の高い燃料を燃焼して発電するので、航続時間を大幅に伸ばすことが可能だ。実際に、既に幾つかのドローン関連企業がシリーズハイブリッドシステムの開発を検討しており、業界のトレンドといえるだろう」(ヤマハ発動機の説明員)という。
ヤマハ発動機は、産業用無人ヘリコプター「FAZER」の他、マルチコプタータイプのドローン「YMR」も展開するなどドローンのメーカーである。ただし、今回開発しているシリーズハイブリッドシステムは、自社のドローンに搭載して販売するのではなく、サプライヤーとしてドローンメーカーに供給するビジネスモデルを中核としていく方針だ。「ドローンのニーズは各国・地域で異なるため、ドローン企業も各国・地域で成長していくことになるのではないか。そこで、世界中のドローン企業にコンタクトして、このシリーズハイブリッドシステムの使い方やサービス提供の方向性などについて提案を進めている」(同説明員)としている。
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