ヤマ発が農業用ドローンに自動飛行機能を追加、RTK方式の位置測位で実現:ドローン
ヤマハ発動機は農業用ドローン「YMR-08AP」を2020年3月中に発売する。高精度測位手法RTKと農業アプリケーションagFMSの組み合わせで自動飛行を実現。
ヤマハ発動機は2020年3月18日、自動飛行によって農薬の自動散布を可能にした農業用ドローン「YMR-08AP」を同年同月中に販売開始すると発表した。2019年3月に同社が発売した「YMR-08」に自動飛行機能を追加した後継モデルとなる。希望小売価格は税込みで206万2500円。
YMR-08APの自動飛行を実現する鍵となったのが、「RTK(Real Time Kinematic)-GNSS」と呼ばれる高精度な位置測位手法の採用だ。RTKは、ユーザー自身が設置するGNSSの基準局と、ドローンなどの移動局がそれぞれ位置データを取得し、お互いのデータを組み合わせることで移動局側の位置をより正確に推定する手法だ。既に自動運転トラクターなどにも採用されており、移動する物体であっても、その位置を誤差数cmの範囲内でリアルタイムに計測できる点が強みである。これにより、所定の散布ルートを大きくずれることなく飛行できるドローンが開発可能となった。
散布ルートの作成は、農薬散布用の専用アプリケーション「agFMS(Agriculture Flight Management System)」で行う。使い方は、まずagFMSをタブレット端末にインストールして圃場の航空写真を取り込む。その後、YMR-08APに同梱されている基準局モジュールで基準局を設定して、同じく同梱の測量モジュールで圃場の測量を行うと、agFMSが散布ルートを自動作成する。またagFMSを使うことで、散布ルートの散布幅や飛行方向を変更する他、圃場内の障害物を回避すべき危険箇所として設定することもできる。
YMR-08APは旧機種のYMR-08と同様、一度の飛行で1ヘクタールの連続散布を行える。一方で、液剤散布装置の散布幅を最大4mから同5m、散布速度を最高時速15kmから同20kmに仕様変更することで散布性能を向上させている。内部ローラーを交換することで、液剤だけでなく粒剤の散布にも対応する。またYMR-08の機能的特徴だった、大型の二重反転ローラーが生む強力な下降気流(ダウンウォッシュ)で農薬を作物の根本に届ける仕組みもYMR-08APに受け継がれている。
加えて、ヤマハ発動機はYMR-08APの発売に合わせて、ドローン用のカートリッジバッテリーのレンタルサービスを開始する。サービス利用者はバッテリーの保管、管理の手間を省力化できる上、YMR-08APDなど農業用ドローン導入時のコストを削減できる。ヤマハ発動機による年一度のメンテナンスも受けられるため、ドローンの性能維持も図りやすくなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 枝豆の売価が3倍になるピンポイント農薬散布技術、オプティムが農家に無償提供
オプティムが東京都内で「スマート農業アライアンス」の成果発表会を開催。減農薬による付加価値で枝豆の売価が3倍になった「ピンポイント農薬散布テクノロジー」を無償提供することで、農家にとってリスクのないスマート農業の普及に乗り出すことを明らかにした。 - ヤマハ発動機のスマート農業基盤「YSAP」、ドローンや無人ヘリコプター活用に特化
ヤマハ発動機と国際航業、トプコン、ウォーターセルの4社は、農業用ドローンや無人ヘリコプターによる農薬散布、施肥の作業や運航のデータを管理するヤマハ発動機のソフトウェアサービス「YSAP」の提供に向けて協業を開始すると発表した。 - 2030年のスマート農業関連市場、ドローン活用が大幅に拡大へ
富士経済は、スマート農業関連市場の調査結果を発表した。2030年のスマート農業関連市場は、2018年比で53.9%増の1074億円と予測。農業用ドローンおよび農業用ドローン活用サービスの市場が大幅に拡大すると予測した。 - 農業を変えるグローバルフードバリューチェーン、スマート農業も貢献
「FOOMA JAPAN 2019 国際食品工業展」(2019年7月9〜12日、東京ビッグサイト)で「グローバルフードバリューチェーン戦略とこれを支える最先端技術」をテーマにしたシンポジウムが開かれ、日本総合研究所創発戦略センター エクスパートの三輪泰史氏が「我が国のグローバルフードバリューチェーン戦略」と題した講演を行った。 - ドローン活用で農家の収益3割増も、ヤンマーとコニカミノルタが新事業
ヤンマーとコニカミノルタは、ドローンを使って農作物の生育状況をセンシングした結果を基にコンサルティングなどを行う「農業リモートセンシング事業」を合弁で始める。新設のサービス事業会社を中心に、「世界初」(ヤンマー)の農業リモートセンシングに基づく部分施肥サービスなどを含めて、2023年度に約100億円の売上高を目指す。 - 電気自動車と農業の接近、スマートアグリ始まる
電気自動車(EV)のユーザーと言えば、都市部における環境意識の高い人々というイメージが強い。しかし今後は、「スマートアグリ」と呼ばれる新しい農業が新たなEVの用途として浮上してくるかもしれない。宮城県岩沼市で開催された「農業用充電ステーション」の開所式を取材し、スマートアグリと呼ばれる新しい農業像を探った。