住友ゴムのMIはレシピ共有でスタート、今はタイヤのライフサイクル全体を対象に:マテリアルズインフォマティクス最前線(2)(5/5 ページ)
本連載ではさまざまなメーカーが注力するマテリアルズインフォマティクスや最新の取り組みを採り上げる。第2回では住友ゴムの取り組みを紹介する。
タイヤのライフサイクル全体でデータを取得し開発に反映
MONOist サステナブル材料の開発で情報科学がどのように貢献しているかも教えてください。
上坂氏 当社ではバイオマス由来の材料を用いたタイヤの開発を行っている。バイオマス由来の材料をタイヤで使用するためには材料の分子設計が重要になるため、過去の実験やレシピのデータを活用しつつ、材料メーカーと協力して分子設計を行っている。また、バイオマス由来材料の活用ではバイオマス由来だから発現する機能に着目して開発することにこだわっている。
一例を挙げると、クラレが開発した液状ファルネセンゴム「LFR(Liquid Farnesene Rubber)」を、当社のスタッドレスタイヤ「ダンロップ WINTER MAXX 02」や「ダンロップ WINTER MAXX 03」の軟化剤として採用した。LFRはバイオ由来の新規ジエンモノマー「ファルネセン」を原料とした液状ゴムで、ゴム分子と結合し抜けにくいためゴムのしなやかさを維持する他、密着力を持続し、氷上性能を一段と長持ちするのに役立った。
しかしながら、サステナブル原材料は汎用的なものではないためコストがかかり、タイヤの値段が高くなってしまう。そのため、機能性があるサステナブル原材料と汎用性がある材料を組み合わせて、高機能でお客様が買いやすい値段のタイヤを開発しなくてはいけないと考えている。
MONOist 今後の展開について教えてください。
石野崇氏(以下、石野氏) 現在、当社では、2023年3月に発表したサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」のもと、タイヤのライフサイクル全体でデータを取得し開発に反映しようとしている。
また、近い将来には、開発のコア部門である設計部門と材料部門が共有できる材料開発のプラットフォームを作りたいと考えている。加えて、現状では、当社の研究所で構築したデータベースを基にゴム材料の物性や希望の性能を実現するレシピの予測を行っているが、今後は、工場でのゴムへの加工や検査のデータもデータベースに取り込んでいく。
これにより、データベースを拡張すれば、企画から、設計、開発、生産までの無駄を可視化し、開発工数を削減できるだろう。
加えて、タイヤの空気圧、荷重、路面状態、摩耗状態を感知する独自のセンシング技術「センシングコア」によりユーザーの自動車で利用されているタイヤの情報も取得し、タイヤの機能開発に反映していく。例えば、センシングコアで、低内圧で高荷重の状況にあったタイヤの情報を取得し、AIに学習させれば、そういった環境に対応するタイヤの設計が行えるだろう。そのため、センシングコアでタイヤの情報を取得し、得られた情報をAIに学習させていく体制を構築していきたいと考えている。
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