東芝が蓄電池システムの充電監視をBLEで無線化、エラー発生率は10年間で1回以下:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
東芝は、工場やプラントなどのインフラなどに用いられる蓄電池システム内の各蓄電池モジュールの充電状態を監視する「充電状態監視」について、BLE(Bluetooth Low Energy)による無線監視が可能なことを実証したと発表した。
実証実験では、BMUと蓄電池モジュール11個を2セット組み込んだ蓄電池システムを2基隣接させて、BMUとCMUをBLEによって接続して行う無線監視の通信遅延を96時間(4日間)連続で測定した。その結果、サブサイクルで最大となる200msを下回る160ms以下の監視周期であれば、通信エラー発生率を10−4以下に抑えられることが分かった。これは、10年間で1回以下という有線監視と同じ通信エラー発生率を、BLEによる無線監視で実現できること意味している。
蓄電池モジュール80個クラスの蓄電池システムにも適用可能
インフラ向け蓄電池システムの市場規模は、再生可能エネルギーによる電力の安定供給をはじめ、鉄道、船舶、VPP(バーチャルパワープラント)など幅広い分野への適用が進めらており今後も拡大が見込まれている。定置用蓄電池の世界市場(容量ベース)は、2035年には2020年の約4.3倍に拡大するという調査結果もある。
この市場拡大が続くインフラ向け蓄電池システムの無線監視による利点はさまざまだ。有線監視のための通信ケーブルが不要になるため、組み立てコストを削減できるとともに、組み立て時の配線ミスなども減らせる。システム保守の簡素化、絶縁対策、設置の自由度向上なども見込める。また、今回の技術では消費者向け製品を含めて広く利用されているBLEを用いているため、無線監視システムのコストも抑えやすい。
今回行った実証実験では、BMUと蓄電池モジュール11個を2セット組み込んだ蓄電池システムを用いていたが、1台のBMUで約20個の蓄電池モジュールをつなげた上で4セットで構成する形で、蓄電池モジュール80個クラスの蓄電池システムにも十分適用できるという。
また、今回の発表はインフラ向け蓄電池システムにおける技術開発となっているが、2035年に2020年比で約14.2倍に急拡大するとともに市場規模も大きい車載用電池に適用可能なポテンシャルがある。ただし、車載電池向けでは要件がより厳しくなることもあり、今後さらなる開発や最適化などが必要になるとみられる。
なお、開発成果の詳細については、イタリアのフィレンツェで開催される通信技術の国際会議「VTC2023-Spring」の中で2023年6月22日(現地時間)に発表される予定だ。
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