東芝がリチウムイオン電池「SCiB」の内部抵抗4割削減、入出力性能と容量を両立:組み込み開発ニュース
東芝は、同社独自のリチウムイオン二次電池「SCiB」の新製品として、高入出力性能と高エネルギー密度を両立したセル「20Ah-HPセル」を新たに追加した。カーボンニュートラルの実現に求められる電動化の需要を捉え、EV(電気自動車)などの車載用途に加えて、製造・物流システム、港湾・建築、船舶、都市交通、定置用などでの採用を目指す。
東芝は2022年1月12日、同社独自のリチウムイオン二次電池「SCiB」の新製品として、高入出力性能と高エネルギー密度を両立したセル「20Ah-HPセル」を新たに追加し、同日から受注を開始したと発表した。カーボンニュートラルの実現に求められる電動化の需要を捉え、EV(電気自動車)などの車載用途に加えて、製造・物流システム、港湾・建築、船舶、都市交通、定置用など幅広い分野での採用を目指す。
これまでSCiBは、入出力性能を重視する「高入出力タイプ」と、エネルギー密度を重視する「大容量タイプ」の2種類のセルをラインアップしていた。新製品の20Ah-HPセルは、大容量タイプセルをベースに内部抵抗を40%低減。現行の大容量タイプのうち同容量の20Ahセルと比べて、入力性能が約1.7倍となる1900W、出力性能が約1.6倍となる1900Wを実現している。
また、内部抵抗の低減により、大電流を通電した際の発熱が抑制でき、冷却システムの簡素化や、それによる低コスト化も実現できる。例えば、水冷を強制空冷に、強制空冷を自然放冷に簡素化できるという。さらに、過電圧が小さくなるので、より幅広いSOCレンジ(State of Chargeレンジ:完全充電状態をSOC100%、完全放電状態をSOC0%とした際に、実際に電池を使うことのできる充電状態の幅の広さ)での使用が可能になる。
内部抵抗の低減によって、連続して充放電した際の発熱が抑制されるため、長寿命化も実現できた。8000回の充放電サイクル時点で、従来の20Ahセルは約10%容量が劣化するのに対して、新製品の20Ah-HPセルはわずかな容量劣化に抑えられるという。
20Ah-HPセルは、従来の20Ahセルに対して入出力性能が向上しているものの、外形寸法は幅116×奥行き22×高さ106mm、公称電圧は2.3Vと同じであるため、現行の20Ahセルで構成する電池モジュールや電池パックの設計を流用したアップグレードが可能になるとしている。ただし、重量については従来の20Ahセルの約515gに対して、20Ah-HPセルは約545gと増加している。
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