ドアツードアの移動サービス実現へ、ダイハツ独自の自動運転車:自動運転技術
ダイハツ工業は「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」において、神戸市で実証走行を行ってきた自動運転車を展示した。
ダイハツ工業は「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」(2023年5月24〜26日、パシフィコ横浜)において、神戸市で実証走行を行ってきた自動運転車を展示した。
自動運転車の実証走行を行ったのは、神戸市北区筑紫が丘を中心とするニュータウンだ。日本総合研究所(日本総研)が主催する「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム」「まちなかサービス事業性検証コンソーシアム」「RAPOCラボ」の活動の一環で、また、神戸市が推進する「地域に活力を与える地域交通IoTモデル構築事業」の取り組みとして、2018年度から乗り合い送迎サービスや自動運転車の実証走行を実施している。
2023年は3月6〜24日に走行した。日本総研とあいおいニッセイ同和損害保険が自動運転車の走行に伴うリスク分析の試行も実施した。今後も自治体と調整しながら実施を検討する。
筑紫が丘ってどんなエリア?
筑紫が丘を中心としたニュータウンは1969年に造成が始まった。居住開始から50年以上が経過し、住民の高齢化が進んでいる。平地からかなり登ったところにある高台で、住宅地の中にも高低差があるなど坂が多いエリアだ。大きめの道が整備されているが、路地に入ると白線がなかったり、歩道と車道が分かれていなかったりする。
筑紫が丘はバスやタクシーなどの移動手段がないわけではないが、バス停まで坂を歩かなければならない場合もある。また、日々の買い物に毎回タクシーを使うのは経済的に負担だ。自治体としても、タクシーよりも手頃で好きなときに乗れる移動手段に関心を寄せている。そこで、ダイハツは介護施設の送迎なども視野に、自動運転車を使ったドアツードアの移動サービスの実現を目指している。
自動運転車は軽自動車「タント」がベースで、7個のLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)と前方用カメラ、高精度GPSを搭載している。車両に搭載した自動運転システムのうち、センサーは外部調達だが、物体や信号の認識、自己位置の推定、経路決定を行う自動運転ECU(電子制御ユニット)は自社開発だ。トヨタ自動車の自動運転技術は取り入れていない。
今回は車両に搭載したセンサーのみで車両周辺を認識する自律型だが、過去には、信号機にカメラを設置してセンサーの検知範囲外の物体の情報をやりとりするなどのインフラ連携の検討も実施した。
今後の課題としては、停止車両の回避や、死角から出てくる歩行者や自転車に対処するなどの挙動の改善がある。さらに、住宅街で交通量が多くないからこそマイペースに行動する人も多く、システムで予想しきれない行動が出てくる可能性があるのも課題だという。
ダイハツのユーザーは初めてクルマを購入するエントリー層や高齢者が多く、市場は地方や郊外がメインだ。自動運転車に必要な高精度地図の整備が都市部よりも遅れることも想定される。そうした状況を踏まえた自動運転技術の開発や、移動による地域活性化に取り組んでいく。また、都市部の自動運転技術に重点を置くトヨタ自動車と差別化を図りながら、独自に自動運転技術の開発を進める。
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