介護施設の朝夕の送迎を個別最適から全体最適へ、ダイハツが共同送迎の導入支援:モビリティサービス
ダイハツ工業は2022年4月22日、通所型の介護施設での送迎業務を地域で効率化するためのサービス「ゴイッショ」の販売を開始したと発表した。自治体や介護施設、送迎業務を受託する地域の交通事業者に参加してもらい、地域の全体最適が実現できるよう支援する。
ダイハツ工業は2022年4月22日、通所型の介護施設での送迎業務を地域で効率化するためのサービス「ゴイッショ」の販売を開始したと発表した。自治体や介護施設、送迎業務を受託する地域の交通事業者に参加してもらい、地域の全体最適が実現できるよう支援する。
人手不足の介護施設では、送迎以外の業務もある時間帯に送迎にスタッフを振り向ける負担が大きいが、送迎業務の外注は単独の介護施設ではコスト面でハードルが高かった。また、介護施設のスタッフはプロのドライバーではないため、運転を負担に感じる職員も少なくなかった。ゴイッショでは複数の介護施設が送迎業務を外部委託することで、地域の全体最適で負担軽減を図る。また、介護の送迎に特化した人材が運行の準備から実際の運行までをサポートする。
過去に実施した実証実験では、介護施設それぞれで送迎用車両を保有するのに比べて、車両を共同利用することで必要な台数を2割削減できたという。また、送迎業務にかかっていた時間が1日当たり75分短縮され、生まれた時間を朝夕の別の業務に充てることができた。労働生産性を向上することで、介護サービスの品質向上につなげられる。
朝夕の送迎以外の時間帯に、高齢者向けの買い物支援や移動のサポート、食事の宅配など別のサービスで稼働率を高めることも目指している。
40の施設で合計200台、1日800人を送迎
ダイハツは2018年から介護施設の送迎業務を効率化するテレマティクスサービス「らくぴた送迎」を提供するなど、福祉介護領域のモビリティサービスに取り組んできた。その中で、1施設での個別最適には限界があると感じ、地域が一体となった送迎業務の効率化について検討してきた。
2020年11月からは、ゴイッショの土台となる実証事業を香川県三豊市でスタートした。同市には介護施設が40カ所あり、利用者は1日800人、200台の送迎車両が使われていた。2019年にダイハツと三豊市で送迎の外部委託と共同化についてニーズを調査したところ、40施設のうち30施設が賛同した。
実証実験に参加したのは5施設(利用者は合計で1日180人、送迎車両は計30台)で、その中で1日25人、車両にして4台分を共同送迎の対象とした。三豊市の実証事業では、車両1台分を外部委託することで1日平均75分の余裕が生まれ、車両台数も20%削減できることが分かった。参加した施設の職員の93%が負担軽減を実感し、残業時間の短縮などにもつながった。
ゴイッショの提供に当たっては、自治体とともに介護施設の課題のヒアリングからスタートする。「送迎業務は外部委託できない」という先入観や諦めによって、送迎業務に課題があると認識していない介護施設も多いためだ。送迎を共同化する効果のシミュレーションなどを通じて実際に導入するかを判断してもらった上で、共同送迎に向けた準備に移る。
運行準備の段階では、収支計画やスタートに向けたロードマップ、運営のフローやマニュアル構築、地域の交通事業者や介護施設との調整や交渉などを支援する。送迎時の介助や接遇の研修も行う。共同送迎の運行がスタートした後は、運行計画の策定を支援するアルゴリズムの提供や、参加者同士の情報連携のサポートなどを提供する。利用者ごとの希望時間や急なキャンセル、送迎の遅延などが発生する中で関係者が増えると情報共有が複雑になるため、共同送迎運行管理システムによって送迎ニーズのすり合わせを支援する。
導入前の調査/検討サポートは自治体向けに、運行準備サポートは自治体と送迎業務を受託する運営団体向けに、運行サポートは送迎業務を受託する運営団体向けにそれぞれダイハツから提供する。調査/検討サポートは所要期間が3カ月から、モデル価格は40施設で150万円となる。運行準備サポートは所要期間が6カ月から、モデル価格は40施設で200万円に設定した。日々の運行サポートは、月額17.5万円で提供する。規模や内容により価格は変動する。
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