ウーブンシティーを生かして地方創生、裾野市がトヨタに期待寄せる:モビリティサービス
静岡県裾野市は2021年10月5日、トヨタ自動車が建設を進めている「ウーブンシティー(Woven City)」との連携について、オンラインで住民向けに説明した。
静岡県裾野市は2021年10月5日、トヨタ自動車が建設を進めている「ウーブンシティー(Woven City)」との連携について、オンラインで住民向けに説明した。
ウーブンシティーは、自動運転車やパーソナルモビリティ、ロボット、スマートホームなどの先端技術を実際の生活環境の中で試すための実験的なスマートシティーで、トヨタ自動車東日本 東富士工場(静岡県裾野市)の跡地に建設中だ。東富士工場の閉鎖に伴う税収の減少をカバーしながら地域貢献するため、「企業版ふるさと納税」を活用している。
裾野市は、ウーブンシティーへの来訪者増加を狙って東富士工場跡地の最寄り駅となるJR岩波駅を交通の結節点として活用するなど、裾野市北部の活性化を進める。また、デジタル技術やデータを利活用して地域の課題を解決する「スソノデジタルクリエイティブシティー構想(SDCC)」を立ち上げ、取り組みの1つとしてウーブンシティーと地域の融合を図る。デジタル技術やデータ利活用の教育にもつなげたい考えだ。
ウーブンシティーは現在、造成など基礎工事などを進めている。2022年から建屋の工事に入り、2025年ごろに街としてオープンすることを目指している。基礎工事と並行してウーブンシティーの「デジタルツイン」も作っており、人やモノの流れなど街の“ソフトウェア面”を検討しているという。VRや3D CGなど新技術を活用し、ウーブンシティーのモデリングや、セキュリティなど安全面の開発を進める。
オンライン説明会に出席したウーブン・プラネット・ホールディングス CEOのジェームス・カフナー氏は「後で変更が難しい工事が進む前に街としての問題を洗い出したり、調整したりできるのがデジタルツインのメリットだ。自動車の開発と同様にソフトウェアファーストで進めている」と述べた。
地元からの信頼が第一
スマートシティーの取り組みは、データの収集や管理、所有権について企業と自治体・住民の間で議論となり、スムーズに進まない場合がある。カフナー氏は「公共の場で技術開発は争点になりやすいが、ウーブンシティーは私有地が中心となる。私有地で始めながら、地域との協力や、地域への貢献につなげたい。透明性を確保し、より良いデータのオーナーシップの形によって信頼を得ていきたい」と語った。
裾野市長の高村謙二氏も「ウーブンシティーを閉ざされた空間にするのはもったいない。なるべくオープンにして、さまざまな人が行き来できる形にしてもらいたい。グローバルな交流ができ、最先端のモビリティを体感できる地域にしていきたい」と期待を寄せた。
トヨタ自動車やウーブン・プラネット、裾野市は、ウーブンシティーの完成まで、SNSや動画配信を活用しながら情報発信を継続し、トヨタ側と住民の意見交換の場も設けていく。
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