中国車もEVも最新エンジンのHEVも、みんな違ってみんないい:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)
週末ですね。月曜日の祝日を満喫した方も、月曜日からフル稼働だった方も、1週間お疲れさまでした。今週も電動車に関する話題が多かったですね。
各社のHEVが華やか、エンジン技術もまだまだ個性に
ここにきて、日系自動車メーカーの新型車はハイブリッド車(HEV)が華やかですね。例えば、今週発表された日産自動車の「エクストレイル」の新モデルは、全面改良で可変圧縮比エンジン「VCターボ」を発電専用に使うシリーズハイブリッド「e-POWER」を搭載します。欧州や中国にもVCターボe-POWERを展開しますが、日本向けがトップバッターです。
新型エクストレイルには電動車向けの新しい4WDシステム「e-4ORCE」も搭載されます。試乗して体験しましたが、コーナーではアクセルを踏めば踏むほど曲がるという不思議な感覚を味わえます。ATTO3と同じく短い試乗でしたが、「ちょっと遠出したいかも」と思わせる魅力がありました。
先週発表されたトヨタ自動車の「クラウン」の新モデルでは、パラレル方式のハイブリッドシステム「デュアルブーストハイブリッドシステム」を搭載します。レクサス「RX」に続き、2車種の採用です。発進応答性の良さやトルクの高さ、スムーズかつダイレクトなフィーリングなど、走りを強く意識したハイブリッドシステムです。
デュアルブーストハイブリッドシステムでは、排気量2.4l(リットル)の直列4気筒ターボエンジンとモーター、トルコンレスの6速ATを組み合わせています。バッテリーは以前話題になったバイポーラ型のニッケル水素電池で、バイポーラ型を実現したことも走行性能に貢献しています。
マツダの新型クロスオーバーSUV「CX-60」にも、排気量3.3lの直列6気筒(!)のディーゼルエンジンと電圧48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「e-SKYACTIV D」が設定されています(マイルドハイブリッドじゃない方の「SKYACTIV-D 3.3」がいいという方もいらっしゃるかもしれませんが)。e-SKYACTIV DはFR(後輪駆動)ベースの4WDなので、そこも他社にない魅力だといえるでしょう。
各社のこだわりのエンジンを搭載した電動車が相次いで出てくるのは本当に興味深い流れですよね。エンジンに情緒的な価値を見出す人も多いのかもしれませんが、燃費や環境性能を追求しながら走りにもこだわっていることで、試乗した人の購入を強く後押しするのではないかと思います。「HEVはラバーバンドフィーリングがちょっと……」なんていう指摘は各社とも散々受け止めてきて、その上で出てきたクルマなんだから、と期待が高まりますよね。
「BYDが日本にもEVを送り込んできたのに、日系自動車メーカーはまだエンジンやHEVにこだわるのか!」とお怒りの方もいらっしゃるのでしょうか。私は全く問題ないと思って楽しく動向を見ています。2050年にカーボンニュートラルを達成するとすれば、2049年までにエンジンを載せたクルマが引退しなければなりません。2049年に引退するクルマが新車として出荷される日は、規制がどうであれまだ先のことです。その日までHEVが環境に貢献する余地が大きいのは明らかです。
今週はこんな記事を公開しました
- 自動車業界向けAI活用入門
- モータースポーツ超入門
- 電動化
- 材料技術
- 車載ソフトウェア
- 車両デザイン
- 電子ブックレット
- オートモーティブメルマガ 編集後記
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- トヨタも採用する「バイポーラ型電池」、出力を向上できる仕組みとは
今回は、「バイポーラ型電池」とは何か、これまでの電池と何が違うのかといった点を解説していきたいと思います。 - 「旦那さんのクルマ?」「お父さんから借りたの?」と思われないクラウンへ
さて、今週はトヨタ自動車の「クラウン」がフルモデルチェンジし、新モデルが世界初公開されました。以前から、「セダンではなくSUVになるらしい」「海外でも販売するらしい」と報じられてきましたね。 - アクアが10年目で全面改良、バイポーラ型ニッケル水素電池で走行性能を向上
トヨタ自動車は2021年7月19日、ハイブリッド車(HEV)「アクア」をフルモデルチェンジして発売した。WLTCモード燃費は先代モデルから20%改善。先代モデルの燃費はJC08モード35.4km/l(リットル)だったが、新型アクアは、JC08モードと比べてより実走行に近い燃費性能が分かるWLTCモード燃費で35.8km/lを達成した。 - 燃費と出力を両立する可変圧縮エンジン、日産が開発秘話語る
「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)では、話題の新型車開発の舞台裏を語る「新車開発講演」が行われた。この中で取り上げられたのが、量産エンジンとしては「世界初」(日産自動車)となる日産自動車の可変圧縮比(VCR、Variable Compression Ratio)エンジンだ。日産自動車 パワートレイン・EV開発本部 アライアンス パワートレイン エンジニアリング ダイレクターの木賀新一氏が、VCRエンジンと、これを搭載する「アルティマ」の最新モデルに関する開発秘話を語った。 - 日産はe-POWERの燃費を25%改善へ、発電用エンジンの熱効率50%で実現
日産自動車は2021年2月26日、シリーズハイブリッドシステム「e-POWER」の次世代版向けに、発電専用エンジンで熱効率50%を実現する技術を開発したと発表した。リーンバーンを実現する新しい燃焼コンセプトの採用や排熱回収、エンジンを完全に定点運転とすることが可能なバッテリー技術を総合的に組み合わせることにより、熱効率50%を達成する。 - FRの直6ディーゼルエンジンが323万円、マツダ「CX-60」の予約受注がスタート
マツダは2022年6月22日、クロスオーバーSUVの新型車「CX-60」の予約受注を同月24日から開始すると発表した。納車開始は、直列6気筒のディーゼルエンジンと電圧48Vのマイルドハイブリッドシステム(MHEV)を組み合わせた「e-SKYACTIV D」が9月から、その他のパワートレインのモデルは12月からを予定している。