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自動車業界が取り組む要因分析、AutoMLによる自動化でさらなる加速へ自動車業界向けAI活用入門(後編)(1/3 ページ)

AIの活用が進む自動車業界だが、その使いこなしという意味では課題も多い。本稿は前後編に分けて、自動車業界が抱えるAI活用の課題を取り上げるとともに、その解決策として「機械学習モデル管理の重要性」(前編)と「コネクテッドデータの活用」(後編)という2つの観点で解説する。

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 自動車業界では、さまざまなデータを活用して、製品やサービスの品質向上が行われるようになっています。前編では、特に工場内で活用されているさまざまな機械学習モデルの品質を維持するための「MLOps」について取り上げました。

 後編の今回は、車両の製造ラインから収集したデータや、走行中の車両から収集されたコネクテッドデータなどのモビリティ系データを対象に行われる「要因分析」と、その自動化に役立つ「AutoML」の活用について紹介します。

さまざまな領域でデータ活用が進む自動車業界

 自動車業界に限らず製造業では、製造工程や検査工程などの領域でデータ活用が進んでおり、機械学習モデルが導入されています。特に工場内においては、あらゆるデータを収集し活用するための取り組みが始まっています。

 例えば、デンソーが2020年10月に自社開発したことを発表した「Factory-IoTプラットフォーム」は、世界130の工場をIoT(モノのインターネット)でつなぎ、工場のさまざまな機器から収集したデータを1つのクラウドに蓄積し、活用するプラットフォームです。

 世界中の工場のデータをつなぐことで、需要にあわせた生産変動に対応できるグローバルな生産体制の強化や、作業者の動きや設備の稼働状況の分析による効率化が可能になるとしています。また、データを活用した改善活動、異常検知などの活用も行われます。

 この他自動車業界では、自動車メーカー各社がインターネットに接続して、通信を行えるコネクテッド車両の開発に力を入れています。既に、車両やドライバー、周辺道路のデータを収集し、それらのデータを活用したサービスが生まれています。自動車メーカー以外のベンチャー企業も乗り出しており、データ収集、提供を行うプラットフォームの開発などを行っています。

 コネクテッド車両のデータ活用サービスはさまざまなものがあります。例えば、ドライバーの運転行動のデータから危険運転を検知したり、過去のデータから交通事故が発生しやすい場所を検出したりといった活用が行われています。

 トヨタ自動車は、「交通事故死傷者ゼロ」を目指して走行データのビッグデータ解析を行っています。例えば、ドライバーが急にアクセルを踏み込んだ場合に、どういうシチュエーション(場所、速度、踏み込み量、ハンドル回転の状況など)であれば「ブレーキの踏み間違い」なのかを分析し、踏み間違えと判定した場合に急加速を阻止する機能を開発しています。

 また、コネクテッド車両から収集したデータを保険料の算定に活用するための取り組みも進んでいます。例えば、ドライブレコーダーやドライバーの運転データから、ドライバーの安全運転度合いに応じた保険料算定に活用したり、事故発生をいち早く察知して消防、警察への通報、サポートカーの手配を行ったりといったサービスに活用しています。

 注目領域としては、車両データや走行ログから故障予測を行い、メンテンナンスを促したりパーツ交換を案内したりといったサービスがあります。他にも、さまざまな場面で新サービスの開発が行われており、この傾向は今後も加速していくと筆者は考えています。

 自動車業界でさまざまなデータが収集され、サービス開発が行われていることは最適化を目指していくという意味でも好ましい流れです。そして、これらの収集したデータのさらなる利活用がより求められるようになってきています。具体的には、効率的にデータ分析を行った上で、これらの分析結果を活用した既存製品の性能開発、品質の改善や新たなサービス創出が求められるようになっているのです。

 これらの要求を解決するために必要な技術が要因分析です。特にAutoMLを用いた要因分析は、より高度な分析を容易に実現できることから、多くのデータ分析に関する課題を解決する際の強力な武器となると筆者は考えています。

 本記事では、まず要因分析の概要や適用分野についてご紹介した上で、特にAutoMLを用いた要因分析の特徴についてご紹介致します。

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