パナソニック技術部門、投資の8割以上を「環境」と「ウェルビーイング」に:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニック ホールディングスは2022年6月13日、技術部門の戦略説明会を開催し、「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」の2つの領域に技術開発投資を集中させていく方針を示した。
人の理解、アップデータブルUX、CPS、ロボティクスなどを強化
「ウェルビーイング」の領域では、具体的には「ひとの理解」「アップデータブルUX」「CPS(サイバーフィジカルシステム)」「人協調・人共存ロボティクス」の領域での技術開発強化を推進する。センシング技術やロボット関連技術などハードウェア領域の一方で、多くの部分はソフトウェア共通基盤やCPSコア、セキュリティなどのデジタル技術領域の強化に力を注ぐ。
ソフトウェア共通基盤は、製品のソフトウェア構成の整理を行い、組み込みが必要な不変領域、機器アプリ稼働実行用のソフトウェアプラットフォーム、共通のクラウド基盤である「Panasonic Digital Platform」、個々のクラウドアプリの4階構成とし、このクラウド基盤とアプリ稼働実行用のソフトウェアプラットフォームを整備する取り組みだ。製品やサービスの体験価値を創出し、タイムリーにアップデートできる環境を作ることを目指している。既に実装が進んでおり、パナソニック製品の中、24品種が対応しており、接続機器台数は600万台以上になっているという。
グループ横断プロジェクトを加速
パナソニック ホールディングスと事業会社の連携により、コア技術をグループ横断で継続的に磨き続ける「コア技術プラットフォーム」なども用意。各事業会社にも設置されたCTOと定期的に横断会議を開催し、全社のコア技術を設定し、プロジェクトなどを構築しながら、横断的な研究開発を進める。小川氏は「事業会社制になり、技術開発において事業会社との距離感が生まれるのが最も大きな懸念事項だったが、あらためて技術はパナソニック全体の共通の資産であることを共有し、共通課題については円滑に協力して研究開発を進めることができている」と体制変更後の状況について語った。
また、最先端技術の取り込みとして、パナソニックグループの米国企業であるYohanaに技術者を数十人派遣し、交流を進めているという。「まだそれほど派遣してから時間を経たわけではないが、メンバーのカルチャーショックは相当なものだ。派遣された技術者では、ソフトウェア開発はデジタル家電でかなりやってきた人もいたが、シリコンバレーのエンジニアのスピード感に比べると、大きな違いがある。特に製品に組み込むソフトウェアだけでなく、開発に使用するツールも常に最先端の情報を追い求める姿勢に大きな考え方の差があると聞いている。そういう感覚を持ち帰ってもらえるだけでも大きな価値がある」と小川氏は技術交流の価値について述べている。その他、ベンチャーキャピタルとの連携により、技術を核としたさまざまな事業創出スキームの構築にも取り組み、カーブアウトなどを進めていく。
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