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パナソニック技術部門、投資の8割以上を「環境」と「ウェルビーイング」に製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

パナソニック ホールディングスは2022年6月13日、技術部門の戦略説明会を開催し、「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」の2つの領域に技術開発投資を集中させていく方針を示した。

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 パナソニック ホールディングスは2022年6月13日、技術部門の戦略説明会を開催し、「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」の2つの領域に技術開発投資を集中させていく方針を示した。

「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」の2つの領域に注力

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パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCTOの小川立夫氏

 パナソニックグループでは2022年4月から、パナソニック ホールディングの傘下に独立運営を行う事業会社が入る持ち株会社制(パナソニック内では事業会社制と呼称)に移行した。以前から技術開発体制の基本的な考えは、事業に直結する研究開発については各事業部門で行い、共通課題については全社横断となる技術部門で担う役割だったが、新体制でも基本的な立ち位置は変わらない。

 パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCTOの小川立夫氏は「個々の事業会社の手の及ばない領域、もしくは事業会社の競争力強化の後押しをグループ横断的に行う。中長期的事業構想に役立つために既存事業の深化や新たな事業機会の創出に貢献する技術開発を行い、技術のダムを作る」と技術部門の役割について述べている。

 その中で、全社横断的な方向性と合わせた上で強化していくのが、「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」の領域だ。パナソニック ホールディングスではグループが目指す姿として「環境」と「くらしとしごとのウェルビーイング」への貢献を掲げているが、技術部門としてもこの領域への投資を強化していく。小川氏は「2022年度の研究開発投資の中でこれらの領域の比率は63.9%だったが、2024年度には82.5%に高めていく」と語っている。

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パナソニック ホールディングス技術部門のポートフォリオの方向性[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

水素やペロブスカイト太陽電池、DERMSなどを強化

 「サステナビリティ」では、パナソニックグループの環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」の実現に向けて、「GHG(温室効果ガス)大気放出ゼロ」と「廃棄物ゼロ」の2つの方向性で技術開発を推進する。

 「GHG大気放出ゼロ」では、再生可能エネルギー活用、需給バランス調整、電化と省エネの3つの領域で、3〜5年後の事業会社の商品やサービスづくりに貢献する技術開発と、将来のエネルギー変革を支える技術開発に取り組む。「廃棄物ゼロ」に向けては、事業会社の循環型モノづくりをさらに進化させる技術開発とサーキュラーエコノミー型事業の創出を進める。具体的には、ライフサイクルアセスメント基盤モノづくり、エコマテリアル開発、リファービッシュ(再生品)などの取り組みを進める。

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サステナビリティ技術の開発方向性[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

 具体的には、再生可能エネルギー活用では、水電解によるグリーン水素生成、ペロブスカイト太陽電池、水素燃料電池などへの技術開発を進める。また、需給バランス調整では、蓄電池やEV(電気自動車)ソリューション、電化と省エネではパワーエレクトロニクスの強化などに取り組む。さらに、分散型電源管理システム(DERMS)関連技術などへの投資も強化する。

 ペロブスカイト太陽電池は、発電層を含む厚みが結晶シリコン太陽電池の100分の10程度と非常に薄いため、結晶シリコン太陽電池より軽量化できたり、インクジェット方式により塗布で発電を行えたりすることが特徴だ。パナソニックが世界最高の変換効率17.9%を達成しており、今後はインクジェットを用いた大規模塗布による太陽電池モジュールの量産方式の確立を進め、工場やビル壁面などで容易に再生可能エネルギーの発電が行える世界を目指す。「高効率で自由度の高いデザイン、サイズが可能なペロブスカイト太陽電池は、あらゆる場所で太陽光発電を行うのに最適な技術だ。量産はまだだが、できる限り早い時期に事業化を発表できるようにしたい」と小川氏は語っている。

 さらに、カーボンニュートラル実現に向け既存のエネルギーをためたり、移動させたりするために水素の活用が注目されているが、これらの技術開発も積極的に進めていく方針だ。既に水素燃料電池については事業展開しているがこれらの基礎技術の強化に加え、水から水素を取り出す水電解によるグリーン水素生成技術の研究開発も進めていく。

 さらに、電力系統では、電力の需要と供給を一致させることが求められるが、再生可能エネルギーは自然由来のものが多く、需要変動が大きくなり、供給と最適な形で一致させることが難しい。そのため、これらの需給バランスを自動で最適に調整する需給バランス調整にデジタル技術を活用して進める動きが広がっているが、これらの最適化システム(DERMS)の提供に取り組む。「需要側の電力を束ねて需給バランスの調整をするDERMSの開発を進めている。既に北米では充電ステーション向けのDERMSを実証予定で、これらの実証を通じた知見の獲得を進めていく」(小川氏)。

 また、カーボンニュートラル化を進めていく中では、CO2貯留技術やCO2からメタンや樹脂を生成するようなカーボンネガティブを実現するような新たな技術にも期待が集まっているが「将来的には必要になる重要な技術だと考えている。重点項目として挙げてはいないがこれらにもチャレンジはしていく」と小川氏は述べている。

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キー技術の例[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

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