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合成燃料の活用に言及した日本、CO2排出100%削減にまた一歩進んだ欧州自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

土曜日ですね。皆さんおつかれさまでした。梅雨入りしましたね。空調に頼らずに快適に過ごせる季節が終わろうとしています。

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モーターの会社が半導体の話をする

 今週公開した中に、日本電産の記事があります(関連記事:日本電産の半導体戦略は、半導体メーカーに「作りたい」と思わせること)。「半導体ソリューションセンター」という新しい組織の説明会の内容を紹介しています。

 同センターの役割は、半導体の購買を技術面でサポートすることです。改めて言うまでもなく、半導体のサプライチェーンは不安定な状況です。この先、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に限らず、世界的に影響が広がる何かのきっかけで同じような状況に陥る可能性は十分にあります。そうしたリスクに対応できるサプライチェーンを構築することが目的の1つです。また、先手を打って、日本電産がモーターを進化させていく上で必要になる次世代の半導体を確保していくことも、同センターの目的です。

 この説明会で個人的に興味深いポイントは、半導体ソリューションセンターの所長を務める日本電産の大村隆司氏が出席した点です。

 大村氏は三菱電機に入社後、日立製作所と三菱電機が半導体の新会社として立ち上げたルネサステクノロジ、現在のルネサス エレクトロニクス、ソニーとずっと半導体に携わってきた方です。それも、車載用半導体に長くかかわってきました。興味深いのはその経歴ではなく、ルネサス時代に「半導体ではなくクルマの話をしていこう」と車載事業を引っ張ってきた人が半導体ソリューションセンターの所長を務めるというところです。

 半導体ではなくクルマの話を、というのは、「クルマに対する理解がなければ、どんな半導体を作るべきか、半導体をどう使うべきかが見えてこない。自動車メーカーやティア1サプライヤーに言われたものを用意する受け身ではいけない。だから、まずはラジコンカーでもいいから動くものを自分たちで作って、自動車に対する理解を深めよう」という趣旨の呼びかけです。

 その話を聞いたのは2015年ごろでした。それ以前のルネサスは、展示会ではチップを並べてパネルでスペックを説明するような、半導体の話をする半導体メーカーだったそうです。その後、実寸大のクルマにルネサスの半導体を載せた自動運転車を走らせるデモを行うまでになりました。

 大村氏は2022年の初めにソニーから日本電産に移ったばかりです。説明会では「引っ張りだこの半導体メーカーを振り向かせるには」「半導体メーカーとうまく付き合うには」と繰り返しコメントしており、半導体そのものや半導体業界に対する理解を日本電産の中で深めていこうとする様子がうかがえました。半導体のルネサスで自動車の話をしようとしてきたように、モーターの日本電産で半導体の話をしようとしているのだと感じました。

 また、大村氏は「現場に戻りたかった。しかし、私が現場に戻れる会社はなかなかない。日本電産では好きにやっていいと言ってもらえた。日本電産が売上高10兆円を目指すということは、そのうちの10%、1兆円くらいは半導体を買うことになる。そのマネジメントにやりがいを感じた」と説明会の中で語りました。

 さらに、「私のエコシステムは世界中にたくさんある。ソニーに行けばソニーに集まってもらったし、日本電産に来たので日本電産に集まってもらえる。このエコシステムを使わないと失礼になる」という発言もありました。そんな大村氏が来たからには、面白いことが起きるんじゃないかと、思っています。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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