京セラがヘッドランプ用半導体レーザー、ランプのLiDAR化や可視光無線通信も視野:車載電子部品
京セラは、「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」(2022年5月25〜27日、パシフィコ横浜)において、自動車のヘッドランプや照明などに向けた半導体レーザーを展示した。半導体レーザーを活用して、ヘッドランプにセンサーとしての機能を持たせたり、ヘッドランプの光による通信機能を実現したりしていく。
京セラは、「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」(2022年5月25〜27日、パシフィコ横浜)において、自動車のヘッドランプや照明などに向けた半導体レーザーを展示した。半導体レーザーを活用して、ヘッドランプにセンサーとしての機能を持たせたり、ヘッドランプの光による通信機能を実現したりしていく。
半導体レーザーは、明るさがLEDの10〜100倍、到達距離が同10倍という特徴がある。LEDと比べて大幅な小型化も図れる。半導体レーザーを光源にしたヘッドランプは1km先まで照らすことができる。レーザーヘッドランプはアウディやBMWが製品化した。なお、レーザーヘッドランプ単体での搭載ではなくLEDヘッドランプの補助という位置付けであり、街灯が少ない郊外やアウトバーンでLEDヘッドランプが届かない照射範囲を補う目的で採用している。
京セラは2021年1月、GaN(窒化ガリウム)ベースの半導体レーザーを手掛ける米国のSoraa Laser Diodeを完全子会社化しており、GaN基板から内製できるようになった(現在の社名はKYOCERA SLD Laser)。人の目を傷つけないため、KYOCERA SLD LaserではANSI(American National Standards Institute、米国国家規格協会)やUL(Underwriters Laboratories、米国保険業者安全試験所)、IEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)の安全認証も取得済みだ。
KYOCERA SLD Laserは既に自動車での採用実績がある。BMWでは「M5」のヘッドランプやニュルブルクリンク24時間耐久レースの参戦車両の装飾で、トヨタ自動車の「e-Palette(イーパレット)」ではファイバーケーブルを使った室内の間接照明で使われている。
レーザー光源とファイバーケーブルを使った間接照明のサンプル。1つの光源で10mのファイバーケーブルまで対応する。サイズが小さい部品の場合は、LEDの方がコスト競争力が高いためレーザーに置き換えるのは簡単ではない。一定の長さのファイバーケーブルが必要で、雨など防水対策が求められる用途であれば、レーザー光源の方がメリットが大きくなる。具体的には、ピックアップトラックの荷台を明るくする照明などが考えられるという[クリックで拡大]
前を照らす光源にとどまらない
半導体レーザー自体は自動車に限らずさまざまな領域で活用されており、ヘッドランプの光源としての搭載事例もある。京セラとKYOCERA SLD Laserは、半導体レーザーを光源として使うだけでなく、付加価値も持たせようとしている。
1つが、ヘッドランプのセンサー化だ。KYOCERA SLD Laserは、1つのセラミックパッケージに白色レーザーと赤外線レーザーを収めるデュアル光源を特徴としており、光軸をそろえて白色レーザーと赤外線レーザーを照射することが可能だ。
これに赤外線対応のカメラを組み合わせると、200m先までの検知に対応したナイトビジョンが実現するという。ToF(Time of Flight)方式での測距も可能なので、ヘッドランプがLiDARを兼ねることもできる。ナイトビジョン対応のヘッドランプ用光源は量産の予定にめどがついているようだ。
もう1つは、ヘッドランプを使った通信だ。KYOCERA SLD Laserでは、GaNレーザーを次世代通信として期待される可視光を使った高速無線通信「Li-Fi(Light Fidelity)」向けのデバイスとしても扱っている。デモキットでのLi-Fiの通信速度は、シングルレーザーのパッケージで5mの距離で最大10Gbps、50mでも1Gbpsを維持できるという。デュアルレーザーのパッケージでは、5mで25Gbps以上を見込める。
Li-Fiは電波ではなく可視光による無線通信なので、電波の干渉を受けずに光が届くところに情報を伝送できる。ヘッドランプの光を使った車車間通信などが実現できる可能性を持った技術だ。車車間通信はユースケースによってはリアルタイム性が求められるため、Li-Fiの「5Gや6Gも超える通信速度」(京セラの説明員)は大きなメリットになり得る。
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