車載用から他の用途へ、リチウムイオン電池のリユースの「論点」:今こそ知りたい電池のあれこれ(11)(3/3 ページ)
今回は「持続可能な開発」のために今後同様に重要となるであろう、電池の「再利用」(リユース)について解説していきたいと思います。
リユース電池の製造プロセスで認証を受けた企業は?
2019年8月19日、UL 1974に基づき、世界初の認証を取得した企業がフォーアールエナジーです。フォーアールエナジーは日産自動車と住友商事が2010年に設立した共同出資会社です。社名の「フォーアール」(4R)とは、電池資源の有効活用に不可欠な「再利用」(Reuse)、「再製品化」(Refabricate)、「再販売」(Resell)、「リサイクル」(Recycle)の「4つのR」を意味しています。
また、フォーアールエナジーは2018年3月に福島県浪江町に使用済み車載リチウムイオン電池のリユースに特化した工場を開設し、EV向け交換用バッテリーや大型蓄電システムなどの製品を製造しています。同社と浪江町では、現在もリユース電池の活用に向けたさまざまな実証試験などを実施しています。
このような電池や車両の新規製造・販売にとどまらず、その先の再利用や資源の有効活用にも目を向けた取り組みは、世界に先駆けてEV「リーフ」を販売した日産自動車だからこその事例でもあり、今後の活動も期待されるところです。
今回は今後リサイクルと同様に重要となるであろう、電池の「再利用」(リユース)についてまとめてみました。
電池のリユースにはさまざまな課題や論点が挙げられており、今後も検討するべき点は多々あるかと思います。そんな中、「車載用電池リユース促進WG」の取り組みや「UL1974」といった電池リユースに関する規格など、リユースを取り巻く環境も徐々に構築されてきており、業界としても今後ますます注視すべき領域といえるでしょう。日本カーリットの電池試験所、危険性評価試験所でも、適切な試験環境・技術をご提供できるよう、これからも取り組んでまいります。
また、経済産業省などによって設置された「車載用電池リユース促進WG」のWebサイト(※2)には、今回ご紹介できなかったその他の取り組み事例などが記載された資料が公開されています。興味のある方は一度ご覧になってみるといいかもしれません。
関連リンク:(※2)http://www.cev-pc.or.jp/xev_kyougikai/event/wg_02/
著者プロフィール
川邉裕(かわべ ゆう)
日本カーリット株式会社 生産本部 受託試験部 電池試験所
研究開発職を経て、2018年より現職。日本カーリットにて、電池の充放電受託試験に従事。受託評価を通して電池産業に貢献できるよう、日々業務に取り組んでいる。
「超逆境クイズバトル!!99人の壁」(フジテレビ系)にジャンル「電池」「小学理科」で出演。
▼日本カーリット
http://www.carlit.co.jp/
▼電池試験所の特徴
http://www.carlit.co.jp/assessment/battery/
▼安全性評価試験(電池)
http://www.carlit.co.jp/assessment/battery/safety.html
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