駆動用バッテリーのリユースへ中古車事業者も参入、リーフの電池は鉄道設備に:電気自動車
電気自動車(EV)などの駆動用リチウムイオンバッテリーのリユースに向けた取り組みが活発化してきた。日産自動車と住友商事の共同出資会社であるフォーアールエナジーは、鉄道の踏切保安装置の電源に日産「リーフ」から取り出した再生バッテリーを試験導入する。また、中古車のインターネットオークションを手掛けるオークネットは投光器やライトなどLED製品を手掛けるMIRAI-LABOとともに、使用済みの駆動用バッテリーの再生、流通に取り組む。
電気自動車(EV)などの駆動用リチウムイオンバッテリーのリユースに向けた取り組みが活発化してきた。日産自動車と住友商事の共同出資会社であるフォーアールエナジーは、鉄道の踏切保安装置の電源に日産「リーフ」から取り出した再生バッテリーを試験導入する。また、中古車のインターネットオークションを手掛けるオークネットは投光器やライトなどLED製品を手掛けるMIRAI-LABOとともに、使用済みの駆動用バッテリーの再生、流通に取り組む。
日本でEVの販売が本格化したのは2010年ごろ。それから10年以上が経過し、今後は駆動用バッテリーの載せ替えや車両の買い替えによって使用済みの駆動用バッテリーが増えていく。自動車メーカーだけでなく中古車流通事業者も参加し、再生バッテリーの多様な用途を模索することが不可欠となる。
残存価値が下がりやすいEVの適正評価にも
オークネットはグループ会社のAISを通じて、年間100万台の中古車検査とグレーディング(残存価値の評価)を行う。自動車だけでなく、中古のスマートフォンやPCについても検査やデータ消去、グレーディングを実施している。こうした経験を基に中古EVのバッテリーの検査やグレーディング技術を確立することにより、残存価値がエンジン車よりも下落しやすいといわれるEVの適正な評価と価格形成につなげる。
また、オークネットは使用済みの駆動用バッテリーの再製品化に取り組むMIRAI-LABOと協力することにより、太陽光発電など再生可能エネルギー向けの分散型蓄電システムの普及に取り組む。MIRAI-LABOではさまざまな道路インフラの電源として使用済みの駆動用バッテリーを活用することを目指している。
日産傘下のフォーアールエナジーは鉄道に進出
フォーアールエナジーは、JR東日本とともに鉄道設備での再生バッテリーの活用に取り組む。フォーアールエナジーでは、2018年3月にバッテリー再生工場を福島県浪江町に設立。電線や電源なしにオフグリッドで点灯することができる外灯の設置に取り組んできた他、電池の転用に関する評価規格「UL1974」の認証を世界で初めて受けた。
JR東日本では、メンテナンス作業などで一時的に停電しているときにも踏切が動作を継続できるよう、全ての踏切保安装置にバッテリーを設置している。従来は鉛蓄電池を使用してきたが、フォーアールエナジーとともに踏切保安装置のバッテリーをリチウムイオン電池である再生バッテリーに置き換える。バッテリーの充電時間を短縮する他、遠隔で劣化の予兆を把握するなどメンテナンス性を高める。耐用期間も鉛蓄電池より長くなる。新品ではなく再生バッテリーを採用することにより、バッテリーの材料や製造時のエネルギーを効率的に使用できるようにする。
2021年4月以降、JRの常磐線や水戸線の踏切10カ所程度に試験導入し、実設備での効果を見極めた上でさらなる導入拡大を目指す。また、踏切保安装置以外にも、無線通信設備や駅の設備などの電源としても導入することを検討する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- なぜリチウムイオン電池は膨らむ? 電解液を劣化させる「過充電」「過放電」とは
電池業界に携わる者の1人として、電池についてあまり世間に知られていないと感じる点や、広く周知したいことを、ささやかながら発信していきたいと思います。まずは連載第1回となる今回から数回にわたり、私たちの生活には欠かせない「リチウムイオン電池」の安全性について解説していきます。 - フォーアールエナジーが電池転用で世界初の認証取得、日産リーフの電池を再製品化
ULは2019年8月19日、フォーアールエナジーに対し、電池の転用に関する評価規格UL1974に基づき世界初の認証を発行したと発表した。 - 日産は2022年に年間100万台の電動車販売、使用済みバッテリーの再利用も並行で
日産自動車は、電気自動車(EV)とシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」搭載車の世界販売台数を2022年度までに合計100万台に拡大する。同年度までに、軽自動車やクロスオーバータイプなどEVの新モデルを8車種投入する。「ノート」「セレナ」に採用しているe-POWERは、今後さらに搭載車種を増やしていく。 - 日産「リーフ」の使用済みバッテリーが外灯に、福島県浪江町から設置開始
日産自動車は、電気自動車「リーフ」の使用済みバッテリーを再利用した外灯を開発し、設置していくプロジェクト「THE REBORN LIGHT」を開始する。 - EVの使用済み電池はまだ使える、日産が北米で実証実験へ
リーフのリチウムイオン二次電池は、繰り返し使って容量が70%まで低下した時点で寿命となる。ただし、寿命に達した後もさまざまな用途で利用できる。電気自動車(EV)が内蔵する電池の量は非常に多い。寿命に達した電池をどう使うか。今後EVが伸びていくに従い、再利用技術が重要になっていく。 - トヨタの超小型EVは“エンジン車並み”を意識せず、電池を含めたビジネスの第一歩に
トヨタ自動車は2020年12月25日、2人乗りの超小型EV(電気自動車)「C+pod(シーポッド)」を法人や自治体向けに限定発売したと発表した。日常生活の近距離移動や定期的な訪問巡回に向けたモデルだ。WLTCモードで高速道路モードを含まない走行距離は150km。最高速度は時速60km。個人向けの本格販売は2022年を予定している。価格は165万〜171.6万円。