車載用から他の用途へ、リチウムイオン電池のリユースの「論点」:今こそ知りたい電池のあれこれ(11)(2/3 ページ)
今回は「持続可能な開発」のために今後同様に重要となるであろう、電池の「再利用」(リユース)について解説していきたいと思います。
(2)安全性
どのような使い方で「リユース」されることを想定すべきか?
本来、車載用途として設計/運用されている電池をその他の用途に転用する場合、安全性の担保も課題の1つです。
リユースする際に車載パックの形状を保つのか、それともモジュールやセルの単位まで分解するのかによっても安全性は異なります。どのような使い方でリユースされるかを想定し、場合によってはリユース時の解体作業を前提としたパック構造なども検討する必要が出てきます。
また、リユースの際に電池がどのような条件(温度、湿度、電流値など)にさらされるのかによっても要求される性能水準が変わってきます。こちらは先述の「残存価値の見える化」と併せてリユース電池を適切な用途に割り当てる仕組みを考える必要があります。
(3)製造物責任
リユース電池における「製造物責任」とは?
製造業では避けて通れない「製造物責任」ですが、電池のリユースの場合はどのように考えるべきかを明確化する必要があります。劣化したリチウムイオン電池は取り扱い方を誤ると、発火や爆発といった重大な事故を引き起こす恐れがあるため、万が一の際の責任の所在を明確にすることがリユース市場の構築に不可欠だと考えられます。
リユース電池をどのように「評価」するか
このように電池のリユースにはさまざまな課題・論点が挙げられており、日本のみならず世界的に検討が進められています。
各種製品に対する安全性の規格基準設定や評価方法の策定を実施している認証企業のUL(Underwriters Laboratories)でも電池のリユースに着目しており、2014年より評価規格の開発に着手し、2018年10月に「UL 1974」(Evaluation for repurposing batteries)初版を発行しました。
UL 1974は、電池リユースのための管理手法を評価する規格です。一般的なUL規格は製品に対する安全性の評価を規定していますが、UL 1974は「製品」ではなく「製造プロセス」に対するものであるというのが他のUL規格と大きく異なる点かと思います。
UL 1974では、リユース電池に関わる製造者は「Original Manufacturer」と「Repurposing Manufacturer」に大別されます。新品の電池や制御回路などの周辺部品を製造するメーカーが「Original Manufacturer」であり、リユースの際の転用プロセスを担うメーカーが「Repurposing Manufacturer」であるという考え方です。
この規格の中では、転用プロセスを通じて製造されたリユース電池の製造者は「Repurposing Manufacturer」として規定され、もともとの電池を製造していない(Original ManufacturerとRepurposing Manufacturerが異なる)場合でも、リユース電池の製造責任は「Repurposing Manufacturer」に帰属するとされています。
先述の通り、UL 1974は「製造プロセス」に対する規格であり、Repurposing Manufacturerには適切な品質管理や安全性の担保、電池の劣化状態を判断するための評価プロセスの策定が求められます。UL 1974の認証とはそういった製造プロセスに対する「品質システム認証」であり、UL 1974の要求を満たす転用プロセスを有する企業が認証登録されます。
この規格に基づき認証されたプロセスを通してリユースされた電池にのみ「UL 1974」の表示が認められ、他の用途での認証や評価に適した電池であると見なされます。ただし、繰り返しになりますが「UL 1974」はあくまでも「製造プロセス」に対する規格であり、この時点ではリユース電池は「製品」としての認証は受けていないという点には注意が必要です。
リユース電池そのものの「製品」としての認証取得のためには別途「リユース後の新しい用途」に応じた規格、例えば定置用蓄電池として用いる場合は「製品」としての定置用蓄電池の規格である「UL 1973」で評価される必要があります。
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