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頭上を走り回る物流ロボット、大胆な配置にも応えるオートストアの柔軟性物流のスマート化(2/2 ページ)

釣り具製品などを展開するハヤブサは2021年12月3日、ロボットを用いた自動物流倉庫システム「オートストア」を導入した自社倉庫の見学会を開催した。レイアウトの柔軟性が高いオートストアの特徴を生かして、入出庫作業を大幅に効率化し、出荷スピードの向上を達成。

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独自レイアウト採用は「高速化のため」

 独自のレイアウトを採用した理由について、ハヤブサ 常務取締役の歯朶(しだ)哲也氏は「ビンの段数を増やすと、その分ロボットが目的のビンを掘り出してピックアップするまで時間がかかってしまう。当社の釣り具製品は小ロットでの注文が多いため、回転数を上げることで出荷スピード全体を高速化したかった。そこで、4段程度に『薄く広く』ビンを配置し、注文頻度の低い製品のみを14段のエリアに格納した」と語る。ビンの設置面積を広くしたことでロボット台数も増やすことができ、理論値では1時間当たり1700ビン以上の出庫が可能になったという。

2階架台上で稼働するロボット

業容拡大時のキャパシティーに不安

 ハヤブサ 常務取締役の歯朶(しだ)哲也氏がオートストアの導入を検討し始めたのは2018年6月ごろだ。同年1月に発表した中期経営計画において2025年までの売り上げ倍化を目標として掲げたが、「それまで活用していた自動化システムの環境下では、ピーク時には週4日夜勤が発生し、出荷までのリードタイムは3〜4日かかっていた」と振り返った。都市部から離れた立地のため、人材確保も難しい。将来的に業容拡大を進めた際に、現在の物流体制で対応できるか不安があり、より大きなキャパシティーを持つ自動化システムを模索し始めた。


ハヤブサ 常務取締役の歯朶哲也氏

 その際に、注目したのがオートストアだった。歯朶氏は以前に、国内初のオートストア導入企業であるニトリの物流機能を担うホームロジスティクスの倉庫を見学していたが、その当時は「とても大規模な導入事例だと思ったため、当社の倉庫にフィットするか不安に感じた」(歯朶氏)と語る。ただ、ハヤブサ自身が自社の課題と導入目的を明確化しており、オートストアがこれらのニーズに応えられると判断したことから導入を決めたという。他社の自動化システムでは対応しづらいレイアウト設計にも応えられることも判断を後押しした。

 歯朶氏によるとオートストア導入による投資金額は約7億7000万円になった。ハヤブサの事業規模を鑑みると比較的大きな投資となるため、社内から導入に反対する意見も出た。これに対して歯朶氏は、導入による人員削減で大きなコストメリットなどを指摘し、説得した。また歯朶氏は「釣り具製品は薄いフラットな形状のためオートストアのビンに収めやすく、その点で相性が良い。釣り具製品の保管場所を省スペース化でき、既存の物流倉庫をアパレル製品などの保管用スペースに活用できるようになる」といった点なども併せて説明したとする。


釣り具製品などを展開するハヤブサ[クリックして拡大]

メリットの一方で想定外の問題も

 現時点で実感している導入メリットについては、「導入前から予想していた通り、大幅な動線改善やピッキングスピードの高速化、出荷ミスの低減、省スペース化などの効果を得られている。倉庫内での人の動きを従来比80〜90%削減でき、それまで4、5人で行っていた作業を2人程度で行えるようになった。労働環境も大幅に改善し、時間外労働は全社員平均で月約6時間にまで減った。注文から出荷までのリードタイムも大幅に短縮できた」と語る。これに加えて想定外のメリットとして、冬場における暖房の使用効率が向上した点を挙げた。2階にビンを配置しているため、従業員作業スペースの天井が低くなったことが理由だという。

 一方で問題も生じた。電力会社の設備不具合による停電が発生した際に、オートストアが全停止してしまった。釣り具製品のほぼ全てをオートストアに格納していたため、停電復旧までの約2時間、入出庫作業が行えなくなったという。歯朶氏は対策として、現在、バックアップ設備の導入などを検討していると説明した。


オートストアを導入したハヤブサの倉庫外観[クリックして拡大]

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