物流業務を5倍に高速化、上下に動く3次元走行AGV開発メーカーの「真の強み」:サプライチェーン改革(1/2 ページ)
床面の移動だけでなく「上下」の3次元移動を実現する、物流倉庫向けAGVを開発した企業がある。AGVソリューションの開発、販売を手掛けるフランスのベンチャー企業、Exotecだ。「Skypod」と名付けられたこのAGVは、現在、欧州を中心に導入件数を広げており、日本の国内企業でもファーストリテイリングが自社倉庫に導入したと報じられている。3次元移動AGVによって物流倉庫の自動化はどのように変わるのか、また、3次元移動をどのようにして実現したのか。Exotec CEOに話を聞いた。
工場や物流倉庫内で作業の効率化、自動化を支援するAGV(無人搬送車)への注目度が高まっている。産業ロボットを開発する国内外のメーカーを中心にAGVの積極的な開発が進んでおり、各社はさまざまな特徴を持つ製品を競って展開している。
その中に、床面の移動だけでなく「上下」の3次元移動を実現する、物流倉庫向けAGVを開発した企業がある。AGVソリューションの開発、販売を手掛けるフランスのベンチャー企業Exotec Solutions(以下、Exotec)だ。「Skypod(スカイポッド)」と呼ばれるこのAGVは、現在、欧州を中心に導入件数を伸ばしている。日本の国内企業でも、ユニクロを展開するファーストリテイリングが欧州の物流倉庫に導入したと報じられている。
3次元移動AGVによって物流倉庫の業務はどのように変わるのか。また、3次元移動をどのようにして実現したのか。Exotec CEOのロマン・ムーラン(Romain Moulin)氏に話を聞いた。
物流業務を約5倍に高速化
Exotecは2015年にフランスで創業した、AGVなどを用いた物流ソリューションを提供するベンチャーである。応用ロボット工学や数学などの学問的背景を持つムーラン氏と、共同創業者であるロナウド・ハイツ(Renaud heitz)氏が「自律型ロボットによる、アジャイルで柔軟性の高いロジスティックシステムの開発」(ムーラン氏)を目指して設立した。近年、EC市場の爆発的な成長に伴い、物流業界では小規模な荷物の発送作業が増大しており課題化している。こうした作業工程の一部をSkypodで代替することで、物流業界の業務効率化を目指すという。
主な事業は、Skypodを中核とする物流システムソリューションの開発と販売である。システムはSkypodの他、Skypodの3次元動作に対応する専用の貨物ラック(棚)とビン(荷物ケース)、ビンから取り出した商品の仕分けを行うためのコンベヤー併設型の専用ステーション(作業場)、そして、商品の箱詰め作業などを担当するピッカー(従業員)で構成される。
システム活用時の大まかな作業の流れは次の通り。まず、顧客からの注文内容に合わせて、フリート管理用ソフトウェアがSkypodを統合制御して、目当ての商品が格納されたビンがあるラックへと向かわせる。目的のビンがラック上方にある場合、Skypodは自動でラック間を昇り、ビンを取り出し、地上へと戻る。その後、ステーションへとビンを搬送するが、その際、コンベヤーにSkypodは機体ごと直接乗り込み、受け取り口にいるピッカーにビンを受け渡す。受け渡し完了後、Skypodは再びビンの取り出し作業に戻る。ビン内の商品はピッカーがばらし、注文ごとに箱詰めを行う。
「当社のシステムでは、Skypodがビンの取り出しから搬送を全て行うため、人間の従業員はステーションにとどまって作業に集中できる。これによってシステムを導入していない場合と比較して、荷詰め作業を約5倍もの速度で行えるようになった」(ムーラン氏)
既にフランスなど欧州や米国などを中心に14件のシステム導入を行った実績があり、機体数でいうと合計約1000台のSkypodが世界中で稼働している状況だという。
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