物流の第4次産業革命「Logistics 4.0」とは何か:サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(1)(1/3 ページ)
物流ビジネスへの注目が日増しに高まる中、新たなイノベーションによって、物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」が起きつつある。本連載では、Logistics 4.0の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する。第1回は、Logistics 4.0までの物流におけるイノベーションの変遷を解説する。
はじめに
「物流(Logistics:ロジスティクス)が熱い!」――。昨今、物流ビジネスへの注目が日増しに高まっています。テレビのニュース番組では、「物流危機」が盛んに報じられ、ビジネス誌では定期的に「物流特集」が組まれるようになりました。物流をテーマとする展示会には、数多くの人が来場するだけではなく、出展を希望する企業が待ち行列を作っています。過去、これほどまでに注目されたことがあっただろうか、と思うほどです。
なぜ、こんなにも熱くなっているのでしょうか。
1つには、物流費が驚くほど上昇しているからです。ヤマト運輸が荷受量を抑制する総量規制を開始後、宅配便の送料はわずか1年の間に10%以上も上昇しました。B2Bのトラック輸送も同様の状況です。しかしながら、人手不足を解消するには至っておらず、既に足元では、荷物を運びたくても、運んでくれる物流会社を見つけられない状況が生じています。物流費の上昇により利益を確保することが難しくなった事業者も少なくありません。「物流クライシス」は、物流の世界に閉じた話ではないのです。運べていたモノが届かなくなるとすれば、サプライチェーンは分断され、日本経済は機能不全に陥るでしょう。
もう1つ、熱くなる理由があります。それは、イノベーションです。物流では、今、まさに、かつての産業革命やIT革命に匹敵する革新的進化が起きようとしています。IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボティクスといった次世代テクノロジーの進化と活用の拡大は、物流の根幹を変えようとしています。
そう、物流の第4次産業革命「Logistics 4.0」として、「省人化」と「標準化」による「物流の装置産業化」が起きつつあるのです。この革新的進化により脱労働集約が進めば、現下の危機的な状況は一気に解消されるはずです。というよりも、危機的な状況にあるからこそ、その解決に資する新たなイノベーションの導入は加速するでしょう。物流を取り巻く世界が一変しようとしているのです。
本連載では、今実際にサプライチェーンの現場でどのような革新が起きようとしているのか、その動向を概説するとともに、MONOistの主要な読者である製造業や情報通信業の皆さまにとってどのように新たな事業機会につながっていくかについてご紹介したいと思います。第1回目の今回は、若干教科書的ではありますが、19世紀に起こった「Logistics 1.0」から、今まさに始まろうとしている「Logistics 4.0」まで、物流におけるイノベーションの変遷を解説します。
Logistics 1.0――輸送の機械化
古来、大量輸送の要は、船舶に委ねられてきました。馬やラクダを利用した陸上輸送では、より多くのモノをスピーディーに運ぶことが難しかったからです。運河は、経済活動を支える大動脈だったといえるでしょう。
19世紀に入って、この船舶依存の状況に大きな変化が生じます。鉄道の出現です。欧米の先進国を中心に、鉄道網が競って整備された結果、陸上での輸送力は飛躍的に向上しました。内陸輸送の基盤は、運河から線路に一大転換を果たしたのです。
蒸気機関の実用化は、船舶の運用にも変化をもたらしました。帆船と違って、天候に左右されない蒸気船の出現は、海上輸送の定時性を格段に高めました。鉄道や蒸気船を使用することで、大量の物資を遠隔地まで正確かつ効率的に運べるようになったのです。
もう1つの重要な変化は、トラックの出現です。当初は蒸気式だったトラックも、20世紀に入ってからは内燃式のエンジンにシフトし、軍需から民需へと広く普及していきました。街からは馬車が姿を消し、数多のトラック運送会社が産声を上げました。ロジスティクスにおける20世紀とは、大量輸送時代の幕開けであったわけです。
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