“堅い”業界で培ったエッジの信頼性をコトづくりに、OKIが取り組むDXへの挑戦:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/3 ページ)
ATM(現金自動預け払い機 )や通信システムなど社会インフラを担うさまざまなモノづくりを担ってきた信頼性や、AIエッジ技術をベースとし、さまざまな領域でのパートナーシップを通じて共創を広げているのがOKIである。OKIでDX/イノベーション統括担当の執行役員を務める田中信一氏に話を聞いた。
「プロジェクションアッセンブリーシステム」を中心にさまざまな成果
MONOist 具体的な成果としてはどのようなものがありますか。
田中氏 「現場変革」という面では、「プロジェクションアッセンブリーシステム」を中心に、組み立て作業のミス低減や作業実績の見える化に貢献するような具体的な実績が数多く生まれている。例えば、プラスチック部品の加工組み立てメーカーである大宝工業では、生産の一部を外部委託先から自社工場に戻す際に、新人や熟練者問わずに同じ品質をアウトプットしたいという要望があり、「プロジェクションアッセンブリーシステム」を活用いただいた。作業の早期習熟とポカミス撲滅に取り組み、成果を生み出すことができている。
また、SUBARUでは、「プロジェクションアッセンブリーシステム」を応用した作業補完システムを「Projection Complement System(PCS)」として共創でシステム化した。これはエンジン生産工程における作業ミスゼロ化に向けたIoT活用システムである。カメラとプロジェクタを組み合わせることで、カメラでエンジンを捉え、それを踏まえてプロジェクタで作業箇所を実際のエンジン上に画像で示し、エンジンのどの部分で作業を行うかが分かるようにし、作業ミス低減に貢献している。
保全活動に向けたものでもさまざまな実績が生まれている。波形解析AI「ForeWave」を活用し、切削加工において工具の摩耗や破損などの異常を検出し、最適なタイミングでの工具交換や保全の実現を目指した実証実験を行ったが、不良率低減につなげることができた。また、プラントメーカーとの共創で、光ファイバーセンサーの活用によりタンク内の温度分布をリアルタイムで把握する取り組みも行うなど、さまざまな実績が生まれている。
「IT・オペレーション変革」については、現在OKIの自社工場でさまざまな実証を行っているところだ。例となる取り組みの1つは、ねじの組付け検査を外観検査で行う実証だ。AIエッジ技術を使い、映像センシングで自動化を行う。現在は本庄工場で実証し、適用した製造ラインの数を増やしていっているところだ。また、映像による骨格抽出を映像AIで実施し、それを使った作業手順の判定なども実証で行っている。AGV(無人搬送車)の制御ネットワークの構築に対し、920MHz帯を使う「SmartHop」を活用した実証なども行っている。
「マネジメント変革」については、OKIとして現在進めているOKI全社生産管理システム統合化への取り組みを土台として提案を進めている。OKIでは、各工場の状態やモノづくり基盤の土台を作り、これらを“あたかも1つの工場のように”把握できるようにする「バーチャルOneFactory」実現に向けた取り組みが行われている。こうした取り組みを実現したいと考えている他の製造業に、統合に向けたリアルな知見なども踏まえて共創で提案していく。
MONOist 今後の抱負を教えてください。
田中氏 製造業向けの取り組みはまだまだ小さいが数は非常に多く、デジタル化に向けた実証が進んできている。2022年度以降には工場ラインに実際に適用されるケースが増えてくると見ており、大きく伸びる可能性がある。一方でユースケースのバリエーションをさらに増やしていく。ユースケースが増えてくれば、ナレッジが集まりこれらを抽出してパッケージ化することもできる。1つ1つ実績を積み重ねて、こうしたサイクルを増やしていきたい。
OKI 田中氏が「ITmedia インダストリーテクノロジーフェア2021冬」に登壇!
本稿に登場したOKI 田中氏が、2021年11月8〜30日に開催中の「「ITmedia インダストリーテクノロジーフェア2021冬」(アイティメディア主催)の「工場最適化展」基調講演に登壇します。「ゼロ・エナジー・ファクトリーを実現するOKI新工場のDX取り組み」をテーマにご講演いただいておりますので、以下のWebサイトからご登録いただき、ぜひご覧ください。
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