AIエッジコンピューティングで害獣対策や渋滞対策、OKIがコンテスト開催:エッジコンピューティング
OKIは2020年9月29日、AIエッジの社会実装拡大に向けて「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト」を開催。共創パートナー19社によるソリューションの開発成果と、その内容の表彰を行った。
OKIは2020年9月29日、AI(人工知能)エッジコンピュータの社会実装拡大に向けたイベント「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト」を開催。共創パートナー19社によるソリューションの開発成果と、その内容の表彰を行った。
「ないから作った」AIエッジコンピューティング端末
OKIでは2019年10月に、戦略製品としてAIエッジコンピュータ「AE2100」を発表。同イベントで講演を行ったOKI 取締役 専務執行役員の坪井正志氏は「AE2100」を中心としたエッジコンピューティング戦略について紹介。「さまざまな社会課題を解決するためには、リアルタイム性が求められる場合も多い。その場合、端末寄り(エッジ)でAIによる情報処理を行うことが課題解決のカギを握る。しかし、従来はこれらに十分に対応できる能力を持つデバイスがなかった。そこで『AE2100』を発売した」と坪井氏は語る。
「AE2100」は「IoT Ready」(さまざまなセンサーをつなぐインタフェース)「AI Ready」(高性能なAIアクセラレータ)「Security Ready」(安心・安全なセキュリティ)の3つのコンセプトを持つ。発売当初は、社会インフラ向けにさまざまなサービスを提供する企業に販売することを検討していたが、用途開拓を含めより幅広い活用を目指しオープンな取り組みに切り替えた。製品の特徴を伝えるためにモニターキャンペーンを実施したところ、現在は300社まで拡大。モニターの85%から「自社のソリューションに活用したい」という回答を得たという。
これらの取り組みからエコシステムパートナー企業は77社にまで増加したという。パートナー企業との共創で進めているAIエッジの具体的な社会実装の例としては車載、船舶、海洋・密漁監視、工場・故障予兆検知、サービスロボットなどに広がっている。
OKIでは、さらにAIエッジ製品やソリューションを拡充していく方針で、同イベントではそれらの製品群を紹介。その1つが「AE2100」のプラットフォームにFPGAによる俯瞰映像合成機能を組み込み、360度の周囲監視・操作支援を遠隔からスムーズに実現するリアルタイムリモートモニタリングシステム「フライングビュー」である。「フライングビュー」は、4台のカメラ映像から周囲360度の俯瞰映像を合成し、遠隔から自由な視点で広域のシームレスなモニタリングを可能とすることで、離れた場所から簡単・安全に、的確な監視や操縦支援を実現する。
「フライングビュー」は、既に顧客環境での実証実験ができる評価機の提供を開始している。OKIでは高度な映像モニタリングを実現する映像AIソリューション「AISION」のラインアップとして、「フライングビュー」の2021年度商用化を目指しているとしている。
AIエッジで害獣対策
一方、AIエッジソリューションコンテストでは、応募した各社ソリューションのデモ動画を専用サイトに掲載し、この日の来場者やパートナーなど数百人によるWeb投票を行い、その結果で表彰を行った。
第1位となったのはミライトによる「アダプティブ型・獣害対策システム」である。同システムは、従来の超音波や光を利用した害獣忌避システムの弱点である「害獣の慣れ」と「人への不快感」をAIで解消することを目指したものだ。
これまでのシステムではタイマーや物体検出センサーによる一律動作のため、害獣の慣れを生むことがあった。また人や害獣以外でも作動するために影響を及ぼすことがあった。同システムはAIエッジコンピューティングを活用することで画像AIにより、対象害獣だけに動作し、効果パターンの自己学習により慣れを防止している。
第2位は、キューオキと久留米工業大学の「AIスマートパーキング」である。AIエッジと画像解析技術により、駐車場での空きスペースを瞬時に表示し、スマートに駐車場利用をサポートするというものだ。こちらもAI機能と、エッジコンピューティング機能が両立しているからこそ実現できたソリューションである。
第3位となったのはコンピュータマインドの「強化学習を用いた信号制御 我輩の辞書に『渋滞』の文字はない」である。同システムは「AE2100」上で動作する強化モデル(DQN)で交通信号制御を実現し、交通渋滞を緩和するというものだ。
関連記事
- 「ないから作った」、OKIが発売する20万円以下のAIエッジコンピュータ
OKIはAIエッジコンピューティング事業戦略と、その戦略製品となるAIエッジコンピュータ「AE2100」を発表した。長年の社会インフラ領域での端末開発の実績を生かし、高信頼性を持ちながら高いコストパフォーマンスを維持する端末を提供し、第4次産業革命を推進していく方針だ。 - システム構築は「たった1時間で完了」、ifLinkのコミュニティーイベント開催
「誰もがカンタンにIoT(モノのインターネット)をつかえる世界」を掲げるifLinkオープンコミュニティが、2020年8月31日、コミュニティーの活動成果を示すイベント「ifLink Open Community Festival 2020 Summer」をオンラインで開催した。本稿では、同日に報道関係者向けに開催されたデモ展示内容をお伝えする。 - いまさら聞けない「エッジコンピューティング」
IoT活用やCPS進展の中で、あらためて脚光を浴びている「エッジコンピューティング」。このエッジコンピューティングはどういうことで、製造業にとってどういう意味があるのかを5分で分かるように簡単に分かりやすく説明します。 - ノンプログラミング開発環境がIoTのエッジとクラウドの相克を解消する
IoT活用を進めていく上で大きな課題になるのが、IoTデバイスなどのエッジ側とクラウド側の間に存在するソフトウェア開発環境の違いだ。この相克を解消するノンプログラミング開発環境に注目が集まっている。 - 組み込み業界に大インパクト「Amazon FreeRTOS」の衝撃
「AWS re:invent 2017」で発表された「Amazon FreeRTOS」は組み込み業界に大きなインパクトを与えることになりそうだ。ベースとなるオープンソースのMCU向けRTOS「FreeRTOS」、FreeRTOSとAmazon FreeRTOSの違いについて解説する。 - スマートファクトリーはエッジリッチが鮮明化、カギは「意味あるデータ」
2017年はスマートファクトリー化への取り組みが大きく加速し、実導入レベルでの動きが大きく広がった1年となった。現実的な運用と成果を考えた際にあらためて注目されたのが「エッジリッチ」「エッジヘビー」の重要性である。2018年はAIを含めたエッジ領域の強化がさらに進む見込みだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.