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ノンプログラミング開発環境がIoTのエッジとクラウドの相克を解消するMONOist 2018年展望(1/3 ページ)

IoT活用を進めていく上で大きな課題になるのが、IoTデバイスなどのエッジ側とクラウド側の間に存在するソフトウェア開発環境の違いだ。この相克を解消するノンプログラミング開発環境に注目が集まっている。

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 2018年、国内の製造業にとってIoT(モノのインターネット)の活用は、試す段階から本格的な導入の段階に入ることになる。スマートファクトリーに代表される工場など製造現場でのIoT活用だけでなく、“モノ売り”から“コト売り”へ移行するためのIoTデバイスなどを用いたサービス展開を実現するための取り組みも必要になってくる。

 これらIoT活用と併せて、2017年に入って急速に注目を集め始めたAI(人工知能)への対応も必要になる。プロセッサがマイコンレベルのIoTデバイスであっても、深層学習(ディープラーニング)に基づくアルゴリズムの実装が可能な技術が既に発表されている以上、組み込み機器の開発に関わる技術者にとってもAIという新たな技術を無視することはできない。

ルネサス エレクトロニクスが発表した「e-AI」
ルネサス エレクトロニクスが発表した「e-AI」。ディープラーニングのアルゴリズムを同社のマイコンに実装できる技術だ(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 AIとIoTが組み合わさることにより、組み込み機器は、AIを基にしたインテリジェントな機能を持ちつつ、通信機能による機能向上も可能なIoTデバイスになることができる。2018年はそれが現実のものになり始める年だと言っても過言ではない。

エッジとクラウドではソフトウェア開発環境が異なる

 と、ここまでは夢と希望に満ちた未来を描いてみたが、そうは問屋がおろさない。この予想を現実のものとするには解決すべき問題が幾つもある。中でも大きな問題になりそうなのが、IoTという広大なフレームワークにおけるそれぞれのソフトウェア開発環境の違いだ。

 一言でIoTと言っても、さまざまなデータを取得するためIoTのエッジに存在するセンサーノードやIoTデバイスから、これらのデータをいったん集約してエッジコンピューティングによる解析などを行うIoTゲートウェイ、データの蓄積や本格的な解析を担当するクラウドに分かれる。

 例えば、エッジ側にあるセンサーノードやIoTデバイス、IoTゲートウェイの開発では、ハードウェアに関する知識、より高い品質やリアルタイム性などが求められる。そして、それらを実現するための開発環境を利用することになる。ソフトウェア開発言語であればCやC++などを用いるのが一般的だが、FPGAなどが関わるとより専門的な言語であるHDL(ハードウェア記述言語)の知識も必要になってくる。

 一方、クラウド側で求められるのは先進的なITシステム開発の知見だ。Perl、Python、Rubyといった比較的新しいソフトウェア開発言語を使うのは当たり前であり、組み込み機器とは全く異なるエンタープライズ系ITシステムに対する知見も必要になる。そしてそのための開発環境も存在する。

 IoTが登場するまで、組み込み機器とエンタープライズ系ITシステムが同じ枠組みの中で連携することを前提にしている事例は少なかった。しかし、これからのIoT時代のソフトウェア開発では、エッジはクラウドを、クラウドはエッジを意識していかなければならないのだ。

 IoTのソフトウェア開発に関わる全ての技術者に対して、エッジのこともクラウドのことも全て分かるようにすることは難しい。一部のスーパーエンジニアには可能かもしれないが、新たなソフトウェア開発言語を習得し、それと関わるさまざまな知見を得ることは多大な労力を必要とする。

 高齢化が進んでいるといわれる組み込みソフトウェアの技術者が、ITシステム関連の最新の言語を習得することは現実的ではない。もちろん、ITシステムの開発に携わる若いソフトウェア技術者にいきなりHDLを習得させるのも無理が過ぎるのは当然のことだ。

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