パナソニックは手堅く増収増益、原材料高騰の長期化がリスク:製造マネジメントニュース
パナソニックは2021年10月28日、2022年3月期(2021年度)第2四半期(7〜9月)の連結業績を発表した。サプライチェーンの混乱や部品や原材料高騰などの影響を強く受けたもののコロナ禍の影響を受けた前年からの回復傾向を示した。また、これに伴い通期の業績見通しは売上高、利益ともに上方修正を行った。
パナソニックは2021年10月28日、2022年3月期(2021年度)第2四半期(7〜9月)の連結業績を発表した。サプライチェーンの混乱や部品や原材料高騰などの影響を強く受けたものの回復傾向を示した。また、これに伴い通期の業績見通しは売上高、利益ともに上方修正を行った。
コロナ禍を含む影響の悪い面を抑え、良い面を伸ばす
パナソニックの2021年度第2四半期の売上高は、前年度同期比4%増の1兆7412億円、営業利益は同4%増の968億円、税引き前利益は同8%増の973億円、当期純利益は同30%増となる765億円となり、増収増益を実現した。
パナソニック 取締役 専務執行役員 CFOの梅田博和氏は「第2四半期は第1四半期よりも強くサプライチェーンの影響や原材料費高騰の影響を受けた。車載機器や家電事業は自動車メーカーの減産やアジア工場のロックダウンの影響から減収となった。銅やその他の素材などの高騰についても、コスト増につながっている。ただ、その中でもオペレーション力強化などを推進することで固定費は第1四半期レベルでコントロールできた」と手応えについて述べている。
コロナ禍を含む事業環境の変化については「悪い面とチャンスの両方の面がある」(梅田氏)とし、一時的な事業環境の悪化にオペレーション力強化などで対応しつつ、新たな事業機会を積極的に取り込んでいく方針だ。具体的には、資材価格高騰や調達難、コロナ禍による工場ロックダウン、車両生産の減少などの一時的な悪化要因に対しては、合理化などの原価力強化やコストコントロール、在庫削減などによるオペレーション力強化で乗り切る。
一方、新たな事業機会として顕在化してきた、情報通信インフラや工場省人化への投資需要拡大やEV(電気自動車)需要の拡大、SCM改善ニーズの高まりなどについては、買収が完了したBlue Yonder(ブルーヨンダー)とのシナジーを生かしていく他、Teslaとのギガファクトリーでの生産ライン増強を進める他、新型電池である4680セルの試作設備を導入し開発を加速させる。
厳しい状況を織り込んでも通期見通しを上方修正
半導体の調達難や原材料高騰の影響は続くと見られているものの、第1四半期、第2四半期ともに想定以上の実績となったことから、2021年度通期の業績見通しについては、売上高、利益ともに上方修正を行った。売上高は前回予想比3000億円増の7兆3000億円、営業利益は同400億円増の3700億円、税引き前利益は同400億円増の3700億円、当期純利益は同300億円増の2400億円を見込む。
梅田氏は「原材料高騰の一部は長期に続きリスクになると見ている。ただ、半導体不足については2021年度いっぱいは綱渡りの状況が続くと見ているが、2022年度からは徐々に回復すると予測する。半導体不足の影響は、家電事業などでパナソニック製品でも影響を受けているが、影響の大きな車載機器については自動車メーカーの減産の影響によるもので、自動車が動き始めれば売れる状況にある。今回の通期見通しは自動車メーカーのフォーキャストと合わせた数値を組み込んだものなので確度は高い」と語っている。
また、パナソニックでは、2022年4月の持ち株会社制への移行を見据え、2021年10月から新体制における8つの事業会社を想定した仮想的な組織体制へと移行している。今回はその新たなセグメントによる業績見通しについても示している。
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