新たに発足したパナソニックのエナジー社、テスラ向け新型電池「4680」を披露:電動化
2021年10月1日付で新たに発足したパナソニックの電池事業を統括するエナジー社 社長 CEOの只信一生氏が報道陣の合同取材に応じた。只信氏は、テスラ向けに開発している新型電池セル「4680」を披露するとともに、2021年度内に量産化に向けた試作設備を国内拠点に導入し、早期に北米工場での量産につなげていきたい考えを示した。
2021年10月1日付で新たに発足したパナソニックの電池事業を統括するエナジー社 社長 CEOの只信一生氏が報道陣の合同取材に応じた。只信氏は、テスラ(Tesla)向けに開発している新型電池セル「4680」を披露するとともに、2021年度内に量産化に向けた試作設備を国内拠点に導入し、早期に北米工場での量産につなげていきたい考えを示した。
パナソニックは2022年4月の持ち株会社制への移行時に設立する8つの事業会社を想定し、2021年10月1日から仮想的な組織体制へと移行している。エナジー社は、これまでのカンパニー制でオートモーティブ社やインダストリーソリューションズ(IS)社などに分散していた電池事業を統括し、2022年4月には「パナソニック エナジー株式会社」が発足する予定だ。主要生産拠点は国内8、海外12の合計20カ所に展開し、グローバル従業員数は国内4500人、海外1万5500人の合計約2万人に上る。
エナジー社の事業は、乾電池、リチウム一次電池、ニッケル水素電池を扱う「エナジーデバイス事業部」と、テスラ向けを中心に車載用円筒形リチウムイオン電池を展開する「モビリティエナジー事業部」、小型リチウムイオン電池と蓄電モジュールや蓄電システムなどの組電池を手掛ける「エナジーソリューション事業」から構成される。売上高の50%強は、モビリティエナジー事業部を中心とする車載向けが占め、残り50%弱がエナジーデバイス事業部とエナジーソリューション事業が担う産業・民生向けとなる。
NCA系でコバルトレスの電池も用意
只信氏は、車載電池事業で鋭意開発を進めてきた新型電池セル4680をメディア向けに初めて公開した。これまでテスラ向けでは1865、2170というサイズの車載用円筒形リチウムイオン電池セルを供給してきたが「テスラとの緊密なパートナーシップの中で、次世代EV(電気自動車)に求められる電池セルとして4680を開発した。実用化のめどが立ったこともあり、次の段階として2021年度内に試作設備を国内拠点に導入し量産化を進めていく」(同氏)という。
電池セルのエネルギー容量は1865から2170で1.5倍に、2170から4680で5倍に増えた。只信氏は「円筒形は安全性が高く電池モジュール内のセル密度を高められる点で大きなメリットになる。より走行距離の長いEVを実現する上で4680という電池セルは重要な技術になるだろう」と強調する。
近年はリチウムイオン電池の主要材料であるコバルトの高騰もあって、EV向けではコバルトを使わないリン酸鉄リチウムイオン電池への注目が集まっている。只信氏は、パナソニックのNCA(ニッケル−コバルト−アルミニウム)系リチウムイオン電池の強みについて「NCA系はもともとコバルトの使用量が少ない。また、コバルトを使わないコバルトレスの電池も技術的には完成しており、ニーズがあれば数年内に量産できる状況にある」と説明。その上で「環境負荷が少なく、安全で高容量ということを追い求めているがまだ道半ばであり、その状況でリン酸鉄リチウムイオン電池に開発リソースを振り向けることはない」(同氏)とした。
なお、モビリティエナジー事業部はこれまで「テスラエナジー事業部」という名称だった。今回の名称変更には、テスラだけにとどまらずさまざまなEVに円筒形リチウムイオン電池の供給を目指す意図がある。只信氏は「エナジー社としてEV市場の変化や広がりに期待するところは大きい。ただし、テスラを中心とした事業展開に影響のない範囲内で進めていく」と述べる。また、アップル(Apple)がEV用電池の供給をパナソニックに打診したという一部報道に関する質問については「もちろんさまざまな可能性は否定しないが当社からは何も答えられない」(同氏)とした。
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