家電やスマホの苦い経験に裏打ちされた、パナソニックの統合コックピットの競争力:車載情報機器(1/2 ページ)
社内カンパニーの1つであるパナソニック オートモーティブ社は、2022年4月から事業会社「パナソニック オートモーティブシステムズ」としてスタートを切る。2021年10月1日からはこれに向けた移行期間で、「自主責任経営体制」となった。
社内カンパニーの1つであるパナソニック オートモーティブ社は、2022年4月から事業会社「パナソニック オートモーティブシステムズ」としてスタートを切る。2021年10月1日からはこれに向けた移行期間で、「自主責任経営体制」となった。
社内カンパニーよりも権限が大幅に広がることについて、オートモーティブ社 CEOの永易正吏氏は「事業会社化がメリットになるよう、経営のスピードを上げていかなければならない。そのためには社内の風土が変わる必要がある。経営の透明性を高めること、失敗を許容すること、一人一人の業務のムダをなくして効率化すること……これらをセットで実現していくことで、初めてスピード経営ができる」と述べた。
2020年度のオートモーティブ社の売上高は1兆3394億円(前年比10%減)。事業会社としての業績目標などについては現在検討中で、今後発表する。「大手のティア1サプライヤーとは違う、パナソニックらしい自動車事業をやる」と永易氏は意気込む。
自動車のコックピットの進化は「見慣れた風景」
パナソニックらしさとは、家電で培われてきたユーザーインタフェース(UI)やユーザー体験(UX)、セキュリティ技術などにある。永易氏は「クルマのコネクテッド化が進む中で、こうした経験がより一層生かせるようになってきた。中でもコックピットの進化のトレンドは、家電や携帯電話機が同じように進んだのを見てきた。見慣れた風景だ」と語る。
“見慣れた風景”は勝ち組として見ていたものばかりではなく、反省や失敗もある。例えば、パナソニックは個人向けスマートフォンから2013年9月に撤退したが、オートモーティブ社の常務兼CTOの水山正重氏は携帯電話機の開発に携わった経験がある。2009年から2013年に現オートモーティブ社に異動するまで、スマートフォンなどの商品開発や要素技術の開発責任者を務め、iPhoneとAndroidスマートフォンの台頭を間近に見てきた。
「スマートフォンでは日本全体が出遅れた。自分たちでいいものを作ることにこだわりすぎて、エコシステム型の開発への移行を重視しなかったことが大きな反省だ。製品が発展してシステムの規模が大きくなるにつれて、内製主体から部品調達型へ、そしてオープンなエコシステムへと移行する必要があった。IT大手のプレイヤーが開発している技術に向けてプラットフォームを提供し、自分たちの技術をIT大手のプレイヤーと連携させるといった標準化を重視する現在の姿勢は、過去の反省の上に成り立っている」と水山氏は過去を振り返る。
スマートフォンの失敗を生かし、早い段階から仲間づくり
オートモーティブ社で注力する統合コックピットは、こうした教訓をもとにパートナーシップを重視して5〜6年前(2015〜2016年ごろ)から仕込みを進めてきた。2016年8月には、ハイパーバイザーを用いた仮想化技術を得意とするドイツの車載ソフトウェア開発会社OpenSynergyを子会社化している。コックピットでメーターやインフォテインメントシステム、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、電子ミラー、乗員モニタリング、ADAS(高度運転支援システム)などが高度に連携するには、ハイパーバイザー(仮想化)などシステムを統合する技術が欠かせない。
統合コックピットの根幹となるOS(基本ソフト)については、主力となっている車載Androidに対応するのはもちろん、Googleとも協力関係を築いた。2019年の消費者向けエレクトロニクス展示会CESでは、当時の最新バージョンのAndroidを組み込んだコックピットの試作品を披露し、Googleが行う車載Androidの実車での作り込みを、パナソニックがパートナーとしてサポートしていることもアピールした。車載Android採用のインフォテインメントシステムは、2018年にホンダの「アコード」で搭載された実績がある。
車載Androidだけでなく、多くの自動車メーカーが重視する車載Linuxにもいち早く対応している。Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクト「Automotive Grade Linux(AGL)」に長年参加しているだけでなく、AGLの旗振り役であるトヨタ自動車がAGLを初採用した2017年発売の「カムリ」のインフォテインメントシステムはパナソニックが開発した。
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