車載Linuxのオープンソース活動は携帯電話機の轍を踏んではならない:車載情報機器(1/2 ページ)
「Automotive Linux Summit 2014」の2日目の基調講演には、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社のインフォテインメント事業部で技術担当(CTO)を務める水山正重氏が登壇。水山氏が、「オープンソース活動では、議論だけに時間を費やすべきではない。開発成果を実装する必要がある」と語る背景には、携帯電話機の開発を担当していた際の経験があった。
2014年7月1〜2日に東京都内で開催された「Automotive Linux Summit 2014」(主催:The Linux Foundation)。2日目の基調講演には、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社のインフォテインメント事業部で技術担当(CTO)を務める水山正重氏が登壇した。講演タイトルは「A New Era - Open Innovation in the Automotive Ecosystem with Linux and Open Source Community」である。
水山氏はまず、車載情報機器が直面している現在の状況について説明した。同氏は、「現在、さまざまな製品のユーザー体験の基準となっているのがスマートフォンだ。ITやクラウドによって急激に進化するスマートフォンと同様のものが求められており、車載情報機器も例外ではない。また車載情報機器は、かつてカーナビゲーションシステムが位置していたダッシュボード中央から、ディスプレイメーターやヘッドアップディスプレイ(HUD)などコックピット全体に広がりつつある。これによって、安全を実現する信頼性も必要になってきている」と語る。
コックピット全体に広がる車載情報機器の安全性を実現するのに求められるのがパーティショニングの技術だ。例えば、マルチメディア(MM)、メーター、HUD、それぞれのディスプレイの制御をどのようなハードウェアとソフトウェアの構成で実現するかによって、サイズ、コスト、安全レベルの高さなどが異なってくる。安全レベルを優先すると、全て別のユニットで制御するか、マルチコアプロセッサを使って1つ1つのプロセッサコアと制御をひも付けるかを選択すべきだが、サイズは大きく、コストも高くなってしまう。そこで、最近になって有力視されているのが、同じプロセッサコア上で異なるOSを動作させられるハイパーバイザの採用が有力視されている。
しかし水山氏は、「ハイパーバイザはサイズやコストの面で問題はないが、メモリや内部バスなどのリソースを共有する以上、完全なパーティショニングとはいえない。ハードウェアとソフトウェアのエンジニアが密接に協力して開発する必要がある」と指摘する。
複雑化する車載情報機器を開発するためには
スマートフォンのような多彩な機能を搭載やコックピット全体への広がり、そして安全性の実現など、複雑化する車載情報機器を開発する上での課題は山積している。これらの課題を、1社単独もしくは数社が提携しての開発で解決するには時間がかかり過ぎる。
そこで、複雑化する車載情報機器の開発を容易化すべく立ち上げられたのが、Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクト「Automotive Grade Linux(AGL)」である。水山氏は、「AGLのようなオープンソースプロジェクトによって共通プラットフォームの開発を加速させなければ、車載情報機器の開発期間はどんどん長くなっていく。そうなると、進化を続けるスマートフォンに取って代わられることになるだろう。今必要なのはスピードだ。AGLの開発成果を実装した上で、その改良や新たな開発を進めてまた実装し……というサイクルをどんどん回していかなければならない」と述べる。
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