パナソニック新体制の主役は事業会社、“裏方”HD会社はDXとGXを積極推進:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
パナソニックは2021年10月1日、2022年4月の持ち株会社制への移行を見据え、従来の社内カンパニー制度を廃止し、新体制における8つの事業会社を想定した仮想的な組織体制へと移行した。これに伴い、パナソニック グループCEOの楠見雄規氏が新体制による方向性について説明した。
パナソニックは2021年10月1日、2022年4月の持ち株会社制への移行を見据え、従来の社内カンパニー制度を廃止し、新体制における8つの事業会社を想定した仮想的な組織体制へと移行した。これに伴い、パナソニック グループCEOの楠見雄規氏が新体制による方向性について説明した。
「重点領域」や「コア領域」を決めない
2022年4月からのパナソニックの新体制では、グループをホールディングス会社が統括し、その傘下に8つの独立企業である事業会社が入る形となる。従来の社内カンパニー制度では決裁権などが限定されるため、迅速な判断や各事業に特化した戦略を円滑にとれるようにするため、各事業を株式会社として独立させることとしている。こうした体制は一般的には「持ち株会社制」といわれるが、楠見氏がまず強調したのが「パナソニックではあくまでも主役は個々の事業会社ということで『事業会社制』と呼ぶ」と訴えた。
同様の考え方で今回新たに示したのが「ホールディングス会社として『重点領域』『コア領域』を定めない」(楠見氏)ということだ。これは前CEOの津賀一宏氏が、経営指標として、各事業を「重点領域」や「コア領域」と切り分け、それぞれに合わせた戦略を推進したことを改めるものだ。
楠見氏は「『重点領域』や『コア領域』という位置付けはアナリストや資本家にとっては分かりやすいもので、資本市場に対して経営の役割を明確に示したものだった。しかし、こうした区分けをすることで、社内では重点領域ではない事業のモチベーションが下がるという問題が生まれていた。さらに顧客からの反応もいまいちで、こうした状況は『重点領域』などをラベル付けした狙いと反していた」と語る。
そのため、ホールディングス会社としての事業内容そのものへの立ち入りは減らし、各事業会社にとっての本質的競争力につながる事業の選定やリソース配分は任せていく。「それぞれの事業会社がさまざまな規模の事業を行っており、必要な投資規模と事業の本質的価値は異なる。事業を顧客が認めてくれている環境があれば、それは競争力があるということで本質的な価値を持っているということにつながる」と楠見氏は訴える。
グリーントランスフォーメーションを積極的に推進
事業そのものの内容については各事業会社に任せつつ、ホールディングス会社としては、人材や文化醸成などを含む共通基盤作りに力を注ぐ考えだ。具体的に力を入れる項目として「GX(グリーントランスフォーメーション)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「現場革新」「デザイン経営」「ブランド」「イノベーション加速」の6つを挙げている。
特に力を入れるのが「GX」と「DX」である。「GX」では、既に2030年に全事業会社でCO2排出実質ゼロに向けた具体的なロードマップを策定したところだとしているが「事業会社によっては前倒しを計画するものもある」(楠見氏)とする。これは、GHGプロトコルにおける「自社での燃料使用や工業プロセスによる直接排出」(スコープ1)と「自社が購入した電気・熱の使用に伴う間接排出」(スコープ2)を対象としたものだが、サプライチェーンや自社製品の生み出す排出も対象としたスコープ3までを含め、これらを通じた排出量削減を算定した「削減貢献量」を広く訴えていく。2050年までに自社のバリューチェーンで排出されるCO2量以上に、削減貢献量がある状況にする目標だ。
楠見氏は「創業者の企業は社会の公器であるという考えの下、CO2削減への取り組みを顧客や社会と一緒に進めていく。パナソニックの製品は世界で毎日10億人に使われており、バリューチェーンで生み出されるCO2排出量は約8600万トンにも及ぶ。その意味でも、顧客や使用者のCO2排出量削減への提案を強化していく。ノウハウを他の製造業に展開することも考えられる」と語っている。
既に省エネやCO2排出量削減に貢献する製品を展開する事業については各事業で展開していくが、これらを組み合わせたインテグレーションなど新たな事業の創出についても積極的に支援していく方針だ。「サプライチェーン管理なども重要になるため、買収完了したBlue Yonderなども削減貢献量に関係してくる。さまざまなソリューションがグループ内にあり、それを最適な形で届けていく」(楠見氏)。
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