パナソニック新体制の主役は事業会社、“裏方”HD会社はDXとGXを積極推進:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニックは2021年10月1日、2022年4月の持ち株会社制への移行を見据え、従来の社内カンパニー制度を廃止し、新体制における8つの事業会社を想定した仮想的な組織体制へと移行した。これに伴い、パナソニック グループCEOの楠見雄規氏が新体制による方向性について説明した。
パナソニック版DX「パナソニックトランスフォーメーション」を推進
「DX」については、各事業のDX支援とグループ全体のIT経営基盤の底上げを推進する。ITの領域だけにとどまらず、働き方やビジネスのやり方を含めて変革を推進し、新たに「パナソニックトランスフォーメーション(PX)」と位置付け、抜本的改革を進めていく。推進するのは2021年5月にCIO(最高情報責任者)に就任した玉置肇氏だ。玉置氏はP&G、ファーストリテイリング、アクサ生命保険と、複数のグローバル企業でCIOとしてのキャリアを積んだ経験を持つ。
楠見氏は課題感として「グループ内には事業ごとに個別最適化されたシステムがたくさんあり、結果としてITが経営のスピードアップに貢献できていない環境があった。ビジネスのやり方や働き方を、ITを徹底活用することで変えていく。これによりスピードと質を高める」と語る。さらに変革後のIT基盤については「変化する働き方にアジャイルに改善できる仕組みを目指す。そのためには基盤はクラウドシステムであることが望ましい。また、共通のデータドリブン基盤の構築にも取り組む。ITについてはホールディングス会社がガバナンスを握る」と楠見氏は語っている。
60年ぶりの経営基本方針を大改訂
「GX」や「DX」などに加えて、基盤として重視しているのが「人を生かす」という点だ。多様な社員の個性と能力を生かす制度設計を進め、事業会社を横断した人材交流やDEI(Diversity、Equity&Inclusion)を推進する。一方で、新体制において一人一人の社員の行動指針として、パナソニックの方向性を一致させるために、新たに60年ぶりに経営基本方針を改訂した。
経営基本方針は創業者である松下幸之助氏が確立した経営理念である「綱領」「信条」「七精神」の実践に向けての考え方を示したものだが「長年の中で薄れてきていた。経営基本方針が浸透していた時期はパナソニックとしても強い時期だった。もう一度経営方針に立ち返って徹底する。そこで時代にそぐわない点や難解な文章を改訂し、より伝わりやすくした」と語る。
現在は、日本語版の他、英語版、中国語版を用意しているが「全世界24万人の社員に向け、さらに対応言語を増やすことを検討している」(楠見氏)。また経営基本方針については一般にも公開し、より広く理念の浸透に努める考えだ。「日頃の活動や議論の中で自然とベースになるようにしていく。根気よく浸透させていく」と楠見氏は語っている。
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