中小向け情報連携アプリを無償公開、現場からDXを支援するIVIの新たな一手:IVI公開シンポジウム2021秋(1)(3/3 ページ)
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年10月7日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Autumn-」を開催した。今回はその中から、IVI 理事長の西岡靖之氏による講演「動き出す、中小製造業!〜つながるものづくり実践編(第一話)〜」の内容を紹介する。
中小製造業向けの情報連携アプリを無償公開へ
製造業においてこうした「つながる化」を容易に進めるためにIVIでは「コネクテッドインダストリーズオープンフレームワーク(CIOF)」の開発を進めてきた。これは、「製造プラットフォームオープン連携事業」として、産業データ共有促進事業費(平成29年度補正予算)補助金を経済産業省から受けて2019年から進めてきたもので、2021年9月にシステムとして完成しリリースしている。
製造業のデータは固有のシステムなどにより生まれたもので外部利用の難しいものも多いが、CIOFは既存のプラットフォーム内のシステムやデータ設定などを大きく改変することなく、容易にデータ連携を実現するための仕組みとしている。「辞書」「契約」「認証」という3つのシステムを組み合わせて実現。この仕組みを活用することで工場内データの安全な活用などが容易に行え、「情報に関する無駄を削減できる他、知財が守れた上で、取引を増やすことができる」と西岡氏は利点について語る。
ただ、CIOFはデータ活用における便利なプラットフォームではあるが、実際に使用できるようにするにはアプリケーションを独自で用意する必要があり、中小製造業にはその点がハードルとなっていた。そこでIVIでは「中小製造業向けでCIOFを活用したアプリケーションを無償で提供する」(西岡氏)と新たに発表した。提供するのは「在庫管理アプリ」や「進捗管理アプリ」で、2022年1月に配信予定としている。IVIに問い合わせることで使用できるようになる。「CIOFそのものも無償公開していくことは決まっていたことだが、情報連携の仕組みが無料でもアプリがなければ結果的に活用できない。そう考えると、基本的なアプリやテンプレートもIVIで無償公開する方がよいと考えた」と西岡氏は語っている。
関連記事
- 製造業はGAFAの下請けとなるのか、とり得る選択肢
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年3月11〜12日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」を開催した。今回はその中から、IVI 理事長の西岡靖之氏による講演「日本の製造業はGAFAの下請けになってしまうのか?〜ソフトウェアの力と組織知能〜」の内容を紹介する。 - さまざまな製造IoTデータを容易に連携、CIOFが2022年に商用化へ
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年3月11〜12日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」を開催した。今回はその中から、IVIが取り組む異種環境間でのデータ連携を実現する「企業間オープン連携フレームワーク」への取り組みについて紹介する。 - サプライチェーン強靭化でまず社内をつなぐ、企業内データ連携を進めるPSLXの狙い
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年3月11〜12日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」を開催した。今回はその中から、今回はその中から、2021年度の新たな取り組みとして開始する「PSLX(Product and Service Lifecycle Transformation)」について紹介する。 - IVIが「スマート工場モデル」を公開、先行する独米に対し“日本式”を提案
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は、日本のモノづくりの良さを織り込んだスマート工場の基本モデル「Industrial Value Chain Reference Architecture (IVRA)」を公開した。 - なぜIVIは新たなスマート工場モデルを打ち出すのか
「緩やかな標準」を掲げ、日本版スマート工場の実現を目指すIVI。2016年12月には新たにスマート工場の基本モデル「IVRA」を打ち出した。その狙いは何なのだろうか。IVI理事長の 西岡靖之氏に話を聞いた。 - スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。 - スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.