CASEは自動車以外にも、陸海空のモビリティで自動運転や電動化の市場拡大:船も「CASE」
富士経済は2021年3月25日、自動車以外のモビリティでのCASE△△(※)△△対応に関する市場調査の結果を発表した。調査対象はフォークリフトやゴルフカートなど陸のモビリティ、船舶など海のモビリティ、航空機や“空飛ぶタクシー”など空のモビリティだ。
富士経済は2021年3月25日、自動車以外のモビリティでのCASE(※)対応に関する市場調査の結果を発表した。調査対象はフォークリフトやゴルフカートなど陸のモビリティ、船舶など海のモビリティ、航空機や“空飛ぶタクシー”など空のモビリティだ。いずれの分野でもコネクテッド化や電動化、自動運転対応が進み、陸海空のモビリティにおけるCASE関連デバイスの市場規模は2035年に2019年比3.3倍の31兆1508億円に拡大する見通しだ。
(※)コネクテッド、自動運転、サービス/シェアリング、電動化
2035年時点でのCASE対応モビリティの台数規模は、陸用で2019年比20.0倍の3802万台、海用が2019年並みの3000台、空用が2019年比8.1倍の4934万台と見込む。陸用モビリティの市場拡大をけん引するのはフォークリフトなど産業用車両の他、シニアカーなどのパーソナルモビリティだ。産業用車両では業務効率化や人員削減のため、パーソナルモビリティを移動手段として利便性を向上するため自動運転化が進んでいくという。現状での運転の自動化レベルは運転支援に相当するものが多いが、完全自動運転化に向けた動きも進んでいくという。海用と空用のモビリティは既に一定の自動運転化が進んでいるが、パイロットや操船者がいる状態での自動化が主流だ。今後は自動運転技術の高度化により、無人運転が進展していくと見込む。
電動化は2035年に向けて陸海空の各分野で拡大する。陸用モビリティの電動化は2035年に2019年比2.1倍の7884万台、海用では同3.8倍の46万台、空用は同2.7倍の1130万台に成長する見通しだ。陸用モビリティは屋内で使用するB2Bサービス機械やパーソナルモビリティで電動化が進んでいるが、産業用車両はディーゼルエンジンが主流だ。産業用車両は中期的にハイブリッド化し、蓄電デバイスの低コスト化によってフル電動も普及するとみられる。
海用モビリティは、排ガス規制の強化などから完全電動式への関心が高い。運航距離によってハイブリッド式と完全電動式が使い分けられていく。空用モビリティは産業用ドローンが大部分を占めるため、すでに電動化率が高い。空飛ぶタクシーの登場や、長距離の運行が増えることにより、ハイブリッド式と完全電動式を使い分ける格好になりそうだ。
CASE対応が進むモビリティは?
空飛ぶタクシーの市場規模は、2035年に1万480台を見込む。2021年に中国で市場が立ち上がり,2023年ごろに日米欧が続くと予想する。短期的には災害支援や遊覧飛行などヘリコプターの代替だが、中期的には地方での人やモノの移動で、長期的には都市部における移動や物流に広がることが期待されている。空飛ぶタクシーは基本的にコネクテッド対応と自動運転化が前提である。当初は有人運転での飛行となるが、中長期的に無人運転も採用される。パワートレインも完全電動式が先行するが、100km以上の飛行ではハイブリッド式が主流となりそうだ。蓄電デバイスのコスト低減やエネルギー密度の向上が進展すれば、100km以上の輸送距離でも完全電動式のシェアが高まる。
船の大きさを示す国際総トンで100総トン以上の大型船舶でも、フル電動化が進む。船舶の耐用年数が伸びていることなどから新規完成件数は減少しているが、大型船舶の電動化は2035年に2019年比10.7倍の960隻に拡大する見通しだ。欧州の北海やバルト海など排ガス規制が厳しい近海運航や、電動化する採算性が確立しやすい定期内航船が電動化のけん引役となる。また、船員不足解消や業務負担の軽減、運航効率化などを目的に、自動運転の高度化も進む。
建設機械でもCASE対応が進んでいる。電動化は2025年に2019年比61.0倍の122万台、コネクテッドおよび自動運転対応は、同35.0倍の105万台に拡大する見通しだ。人材不足の解消や安全性向上の他、排ガスや騒音など各種規制への対応が建設機械でのCASEを推進する。
建設機械の自動運転では、人の操縦を支援するタイプが増加するとともに、コネクテッド化を組み合わせた無人運転化が徐々に進んでいる。パワートレインは現状ではディーゼルエンジンが多いが、燃費削減のためハイブリッド式のラインアップ拡充が進められており、完全電動式の開発も行われている。欧州や中国など排ガス規制が強化されるエリアを中心にハイブリッド式の需要が拡大する。欧州ではミニショベルのような小型機から完全電動式が製品化されているが、大型機は電池の大容量化や充電環境の確保など課題が多いため、ハイブリッド式が主流になるとみられる。
CASE対応のシニアカーも成長市場だ。コネクテッドや自動運転に対応したシニアカーは2035年に2019年比5.7倍の17万台に拡大する。高齢者のパーソナルモビリティとして需要が拡大する。自動運転関連では、センサーを活用した障害物探索や自律走行など利便性向上を目的にさまざまな機能が追加されていく見通しだ。見守りサービスや、完全自動運転システムを生かした無人での配車サービスなどの展開も見込まれる。
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