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海運もゼロエミッション、燃料電池で動く「日本初」の船舶が2024年竣工燃料電池車(1/3 ページ)

日本郵船、東芝エネルギーシステムズ、川崎重工業、ENEOS、日本海事協会の5社は、2020年9月1日に「高出力燃料電池搭載船の実用化に向けた実証事業」を開始した。水素で発電する燃料電池を船舶で使用し、温室効果ガスの排出削減に取り組む。同日、5社合同の記者説明会を実施し、燃料電池船の実証実験における意義と概要を説明した。

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 日本郵船、東芝エネルギーシステムズ、川崎重工業、ENEOS、日本海事協会の5社は、2020年9月1日に「高出力燃料電池搭載船の実用化に向けた実証事業」を開始した。水素で発電する燃料電池を船舶で使用し、温室効果ガスの排出削減に取り組む。同日、5社合同の記者説明会を実施し、燃料電池船の実証実験における意義と概要を説明した。

→連載『船も「CASE」』バックナンバー

 この実証事業は、2020年9月〜2025年2月末の5年間をかけて取り組む予定だ。2020年はフィジビリティスタディー(実行可能性調査)に充てられ、2021年から燃料電池船の基本設計に取り掛かる。2022年からシステムや設備の製造、2023年から実証船の建造がそれぞれ始まる。実証船の竣工(しゅんこう)は2024年6月を予定しており、その後半年をかけて実証運航を実施するとしている。

 実証運航は日本郵船グループの海洋事業サービス会社・新日本海洋社の本社がある横浜を主な拠点にするという。

代替燃料だけでは達成できない排出削減

 プロジェクトリーダーとなる日本郵船でグリーンビジネスグループのグループ長を務める中村利氏は、説明会冒頭で実証事業の意義について「商業利用が可能なサイズの燃料電池搭載船の開発であるという点、そして燃料電池に使用する水素の供給を伴う実証運航であるという点で日本初の試みになる」と語った(「世界初」という意味では、2021年にノルウェーのフェリー船会社によって、液化水素を使う燃料電池船が就役する予定だ)。高出力燃料電池搭載船の実用化に5社で取り組む。

 続けて中村氏は、海運業界において脱炭素への取り組みが急務であることを挙げた。2016年のパリ協定の発効を機に、脱炭素化への世界的な機運の高まりを受けて、海運業界でも国際海運におけるGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出削減が課題となっている。

 IMO(国際海事機関)は、21世紀中の可能な限り早期にGHG排出ゼロを目指すというビジョンを掲げた。その具体的な目標として、2050年度のGHG排出量を2008年度と比べて半減するとしている。「海に囲まれて国際貿易の恩恵をあずかっている海洋立国としての日本としても、この目標を全うするだけでなく、他の国をリードしていく必要があると考えている」と中村氏は語った。


GHG排出量削減は海運業界でも重要な問題として認識されている(クリックして拡大) 出典:日本郵船

 このような社会からの要請に応じるために、海運業界はどのように脱炭素化へ取り組まなければならないのか。その1つの手段として中村氏が挙げたのが、代替燃料の導入だ。

 現在、代替燃料として成長期(普及段階)にあるのがLNG(液化天然ガス)だ。LNG燃料は2010年代前半からの検討期(2013年〜)と導入期(2016年〜)を経て、2020年代に代替燃料として大きく成長していくとされている。日本郵船もLNG燃料船に取り組んでいるが、その一方で、LNG燃料船のGHG排出量削減は約20〜30%の改善にとどまる。その他の省エネルギー技術の導入を加えても、IMOが2050年までの目標とするGHG排出量50%削減は難しい見込みだ。そこで、LNGに代わる燃料の導入が求められている。


現在代替燃料として先行しているLNGだけではGHG削減50%の達成は難しい。そのため、水素と燃料電池の組み合わせに期待がかかる(クリックして拡大) 出典:日本郵船

 現在、代替燃料としては、アンモニアや合成メタン、バイオ燃料などさまざまなものが開発されている。また、動力源としても、従来の化石燃料を用いた内燃機関に加えて、燃料電池など複数の手段がそろいつつある。今回の実証事業では、これらの中から、水素と燃料電池の組み合わせを選択した。

 陸上の交通手段では燃料電池車などの開発が進んでいるものの、海上における取り組みは「いまだ不十分」(中村氏)という状況だ。「船舶などの海上利用でも水素と燃料電池の取り組みを広げていき、GHGの排出をなくしたゼロエミッション船舶の開発を目指していく」(中村氏)。

 一方で、この取り組みの技術的なハードルは「とても高い」と中村氏は言う。そのため、1つの企業で開発していくのは不可能だとし、日本郵船はオープンイノベーションで各分野のリーディングカンパニーと連携することで、実証事業に取り組むことになった。「海事産業を集積した海洋立国の日本として世界に発信していく」(中村氏)という考えだ。

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