NEC自社開発の空飛ぶクルマが飛んだ、ただし「機体ビジネスには参入せず」:車両デザイン(1/2 ページ)
NECは2019年8月5日、同社 我孫子事業場(千葉県我孫子市)で記者会見を開き、“空飛ぶクルマ”の浮上実験に成功したと発表した。
NECは2019年8月5日、同社 我孫子事業場(千葉県我孫子市)で記者会見を開き、“空飛ぶクルマ”の浮上実験に成功したと発表した。
機体と制御ソフトウェアはNECで自社開発したものだ。同事業場に機体検証を行うための施設を設置。その施設で、離陸重量148kg、外形寸法が縦3.9×横3.7×高さ1.3mの機体を、地上3mの高さまで自動で姿勢制御しながら浮上させた。NECは「既存のドローンの姿勢制御技術は流用できなかったため、一から飛ばし方を検討した。この機体の大きさで飛べたのがポイントだ」(NEC ナショナルセキュリティソリューション事業部 事業部長の岡田浩二氏)と語る。
ただ、空飛ぶクルマの機体開発に参入する意図はない。飛ぶことを理解し、空飛ぶクルマの管理基盤を構築するための足掛かりとして、機体を試作した。NECは、小惑星探査機「はやぶさ」など無人機のノウハウ、航空管制技術、5G(第5世代移動通信)をはじめとする通信技術、サイバーセキュリティといった社内の実績や知見を融合し、新たな移動環境づくりに貢献する考えだ。
空飛ぶクルマの管理基盤構築に向けて、実機までつくる
空飛ぶクルマについて、経済産業省と国土交通省は「空の移動革命」と呼んでいる。空の物流や旅客輸送が大衆化する社会に向けた取り組みだ。自動車を飛ばすのではなく、ドローンの大型化、航空機の電動化や小型化といったアプローチで空の移動を手軽にすることを目指す。
これに関連した「空の移動革命に向けた官民協議会」では具体的なロードマップとして、2023年以降にモノの輸送で空飛ぶクルマを実用化することを計画している。人の移動は段階的に2020年代半ば以降に地方で、2030年代以降に都市部で実現したい考えだ。NECは同官民協議会のメンバーでもある。
NECが空飛ぶクルマに注目するのは、強みと実績のある既存分野の技術が応用できるからだ。「はやぶさや航空機を無人機として捉えれば、空飛ぶクルマも無人機の延長線上にある」(NECの担当者)。具体的には、飛行計画の策定や機体の状態把握、管制システム、機体同士や機体と管制センターがやりとりするための無線通信技術、サイバーセキュリティなどが既存分野としてある。管理基盤は、モノから人、地方から都市部、少数から複数の機体へと空の移動革命が進展するのに合わせて進化させていく。機体やサービスの提供ではなく、移動環境の管理基盤に注力する。
また、飛行計画の策定や機体の状態把握、管制には、自律飛行技術やGPSによる現在地の把握など「飛ぶことに対する理解」が不可欠だ。NECは実際に機体を試作することによって、自律飛行や自己位置の把握に関する技術検証を行い、管理基盤の構築、進化につなげる。
空飛ぶクルマの管理基盤の開発に向けた実証は、福島ロボットテストフィールドなどを利用する予定はなく、NECの我孫子事業場で行う。
2019年2月にポリカーボネート性クリアフェンスで囲った縦20×横20×高さ10mの実験場を設けたが、横方向の飛行に技術検証を広げるには手狭だ。国土交通省から許可を得て、2019年内に我孫子事業場の敷地内で飛行範囲を拡大したい考えだ。
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