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NEC自社開発の空飛ぶクルマが飛んだ、ただし「機体ビジネスには参入せず」車両デザイン(2/2 ページ)

NECは2019年8月5日、同社 我孫子事業場(千葉県我孫子市)で記者会見を開き、“空飛ぶクルマ”の浮上実験に成功したと発表した。

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空飛ぶクルマが他社にないなら、自前で用意


モーターや回転翼の機構も自社開発(クリックして拡大)

 機体を自社開発した背景には、実証に使うことができる空飛ぶクルマを持つ企業がおらず、制作を委託するにも“億単位”の費用が発生するといわれたことなどがある。また、「実機なしに機体制御のアルゴリズムを開発しても意味がなく、実機とセットで開発する必要があった」(NECの担当者)という理由もある。

 実質的な開発期間は10カ月だ。試作機の開発に当たっては、ドローンを大型化するのではなく航空機を手本としたという。航空機の信頼性検討手法や設計を流用することで安全性を担保しやすくなり、実用化の近道になると判断したためだ。海外の動向も、「中国ではドローン大型化のアプローチをとる企業もいるが、欧米の航空機大手は航空機から降りていくことで取り組んでいる」(NECの担当者)という状況だ。

 記者会見の当日は機体の浮上のみ実演したが、横方向の移動もできるという。離陸重量は航空機製造事業法の適用範囲外となる150kg未満となっているが、300kg以上で離陸できる能力は有しており、2023年以降の実用化を目指すモノの輸送を視野に入れたスペックだとしている。機体にはカーボン製モノコックを採用し、軽量化を図った。

 機体に搭載した4つの回転翼とブレード角度の可変構造も自社開発だ。モーター出力の設計値は30kWで、重量は1個当たり7kgに抑えた。「飛ぶためにはモーターは1個10kg以下でなければならなかった。一定以上の出力になるとモーターの質量も比例して大きくなり、20kWなら20kg、30kWなら30kgというのも珍しくない。軽量化を重視した」(NECの担当者)。

ブレードの角度は可変機構となっている(クリックして拡大)

 機体サイズも、空域やすれ違いながら飛行することを想定した大きさとした。ただ、「このスケールにこだわりはない。まずはやってみて、安全性を確かめる」(NECの担当者)。試作したのは離陸重量148kg、外形寸法が縦3.9×横3.7×高さ1.3mの機体とその制御技術だが、これより大きい機体であっても技術的には「比例倍で応用できそうだ」(NECの担当者)とみている。実機を飛ばす中で得た技術的知見は、NECが出資している空飛ぶクルマのベンチャー企業CART!VATOR(カーティベーター)に提供する。

「何もしないのはあり得ない」

 全てNECの内製というわけではなく、サプライヤーの協力も得ている。例えば、モーターのケースやハブユニットはNSKが提供した。空のモビリティはNSKとしては新領域となる。自動車並みの安全性を狙って開発したという。

 NSKの担当者は、「1社で機体までやることはできなかったので、NECと実証できるのはいいチャンスだ。空飛ぶクルマは将来に起きる変化の大きな可能性の1つ。それに対して何もしないのはあり得ないし、ポッと始めてすぐに形にできることではない。コアコンピタンスであるベアリングや直動部品といったメカの技術をどう生かせるか、何かしら行動しておきたい」と空飛ぶクルマに対する見方を語った。

NECの“空飛ぶクルマ”浮上実験の様子。0:25ごろから浮上(クリックで再生)

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