検索
ニュース

夢膨らむ「空飛ぶクルマ」、MRJも苦労した耐空証明が事業化のハードルに車両デザイン(1/2 ページ)

経済産業省 製造産業局と国土交通省 航空局は2018年8月29日、東京都内で「第1回 空の移動革命に向けた官民協議会」を開催した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

第1回 空の移動革命に向けた官民協議会の様子(クリックして拡大)

 新しい空飛ぶモビリティを、日本が世界で稼げる産業に――。経済産業省 製造産業局と国土交通省 航空局は2018年8月29日、東京都内で「第1回 空の移動革命に向けた官民協議会」を開催した。

 これまで、空を飛ぶ移動手段としては長距離輸送向けに航空機が広く使われてきた。これに対し、同協議会は、大型ドローンや、ヘリコプターのように垂直に離着陸できる電動飛行機「eVTOL」といった新しいモビリティを、手軽な短中距離の移動手段として使えるようにすることを目指す。

 都市部の渋滞を回避できる移動サービスや、離島と本土の移動手段、災害時の物資輸送といった用途での可能性に、ベンチャー企業などが期待を膨らませる。こうした空飛ぶモビリティがパイロットなしで自律飛行できれば、さらに高い自由度でヒトやモノが移動できるというもくろみもある。

 空飛ぶモビリティの実用化について、1つの節目になりそうなのが2023年だ。Uber Technologiesは2023年に空飛ぶタクシーのサービスを開始することを目指す。同協議会に参加した他の企業も2023年の事業化を目指す計画や、「今後5年間が勝負」(テトラ・アビエーション CEOの中井佑氏)という見方を示した。また、2020年開催のドバイ万博も空飛ぶモビリティ披露の場として注目を集める。

 大型ドローンやeVTOLの開発は海外でも活発で、特に米国は国を挙げて実用化に取り組んでいる。経済産業省と国土交通省も、こうした空飛ぶモビリティを新しい産業として育成し、世界の市場で稼げるよう官民で連携していく方針だ。同協議会では、日本として取り組むべき技術課題や制度整備などを議論し、2018年内にもロードマップを策定する。

道路は混んでいるのに空はすいている、「活用しないのはもったいない」


NECが展示した無人実証機の模型(クリックして拡大)

 空の移動革命に向けた官民協議会には、民間から宇宙航空研究開発機構(JAXA)やエアバス・ジャパン、ANAホールディングス、日本航空(JAL)、航空宇宙カンパニーを持つSUBARU(スバル)、ヤマトホールディングスなどが構成員として参加している。29日の初会合では、構成員の7社が空の移動に関する取り組みの現状を説明した。

 登壇したのは、ドローンやエアモビリティが専門のファンドDrone Fund、NEC、Uberの他、CARTIVATOR、プロドローン、テトラ・アビエーション、Temmaといった空飛ぶモビリティの機体を設計開発する企業だ。

 登壇者の多くは、空飛ぶモビリティのメリットとして移動時間の短縮を挙げる。鉄道よりも短時間で目的地に到着できる点や、渋滞がなく到着時間が読みやすいことが従来のモビリティにない強みだという。「例えば港区から新宿まで5分で到着できるとしたら、高額でも利用したいという需要があるのではないか」(Drone Fund ゼネラルパートナーの千葉功太郎氏)という予測や、「時間を貴重に感じている人を助けたい。米国の調査では、渋滞がなく到着時間が予測できる移動手段は高く評価されている」(Temma 社長の福井宏治氏)というコメントが出た。各社とも、開けた空間である空を活用すれば移動の効率が高められるという前提の発想だ。


CARTIVATORが「人とくるまのテクノロジー展2018」で披露した開発中の実機(クリックして拡大)

 また、ヘリコプターと比べて小さな機体を想定するのも各社共通で、サイズの小ささを生かしてより多くの台数を飛ばすことを狙う。「ドアトゥドアで飛べるクルマを計画している。小さければどこでも飛べるし、陸を走る機能を持たせれば移動距離を伸ばせる」(CARTIVATOR 共同代表の中村翼氏)。また、「ヘリコプターは区域内で数台しか飛べないが、ドローンやエアモビリティなら、もっと高い密度で飛ぶことができる。その利点を生かせば、多くのヒトやモノを運ぶことが可能だ。ヘリコプターは非効率だ」(Drone Fundの千葉氏)と、ヘリコプターと比べて利便性を高められるという説明もあった。

 また、大型ドローンやeVTOLは、エンジンではなく電動のためヘリコプターよりも静粛性や環境性能が高く、飛行コストを抑えられる点も複数の登壇者が強調。「ドクターヘリは人命のためとはいえ飛ばすために膨大なコストがかかっている。また、緊急事態ではあるものの、苦情が出るレベルで騒音も発生する」(CARTIVATORの中村氏)など、緊急用途での実用化が早いとみる意見が多く上がった。

 Uberは米国のダラスとロサンゼルスにおいて、2020年から垂直離着陸機「uber AIR」の試験飛行を開始し、2023年から商用サービスを展開する目標だ。密集度の高い地域が複数あり、激しい交通渋滞が慢性化した都市部が同サービスに理想的であり、時速240〜320kmで飛行するuber AIRで移動時間を大幅に短縮できるとしている。離着陸の拠点を複数設置するため、不動産会社などの協力も仰いでいる。また、垂直離着陸機の電動化も視野に入れ、機体の開発を複数の企業と進めている。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る