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カッコ悪くなるくらいならプロペラは4つ、空飛ぶクルマの姿勢制御と軽量化車両デザイン(1/2 ページ)

2018年5月23日〜25日の3日間、パシフィコ横浜で「人とくるまのテクノロジー展2018 横浜」が開催された。この展示会の主催者企画の中から、CART!VATOR(カーティベーター)の取り組みを紹介する。

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CART!VATORの福澤知浩氏(クリックして拡大)

 2018年5月23日〜25日の3日間、パシフィコ横浜で「人とくるまのテクノロジー展2018 横浜」が開催された。この展示会の主催者企画の中から、CARTIVATOR(カーティベーター、本稿では社名ロゴのCART!VATORで表記)の取り組みを紹介する。

 福澤知浩氏は、CART!VATORの代表理事として空飛ぶクルマ「SkyDrive」の開発に奔走している。講演では、空飛ぶクルマの概要の他、機体構造や独自の仕組みについても説明が行われた。展示スペースで公開されていた開発中の実機も併せて紹介する。

一番あり得なくて、一番面白そう


2014年には5分の1スケールのラジコン試作機を飛行させた(クリックして拡大)

 福澤氏が率いるCART!VATORは、自動車メーカーに勤務する20代前半のメンバー数人によるプロジェクトが原点となっている。クルマが好きで自動車メーカーに就職した彼らだが、自分たちがチーフエンジニアやプロジェクトリーダーとなるにはまだまだ経験や時間が必要だった。そこで、自分たちが中心となって作れる何かを模索する中でたどり着いたのが、“空飛ぶクルマ”だったという。

 福澤氏は、空飛ぶクルマを選んだ理由を「一番あり得なさそう。だけど、一番面白そう」と語る。開発はおよそ3年半前にスタートし、2014年には5分の1スケールのラジコン試作機を飛行させることに成功した。

 空飛ぶクルマにもいろいろなタイプがある。CART!VATORが目指すのは、道路の走行から浮上、飛行をシームレスに行えるものだ。機体サイズは、空飛ぶクルマとして最小を目指す。用途としては、救命現場での緊急輸送や、観光地での観光フライト、予算の関係で廃止となった離島への移動手段などが考えられるという。まずは2020年の有人デモフライトを目標に開発を急ぐ。

デザイン優先でプロペラは4基

 CART!VATORが開発する空飛ぶクルマには、「SkyDrive」(スカイドライブ)という名前が付いており、現在テスト機である「SD-01」が開発の途上にある。SD-01は、大まかに説明すると大型のドローンに自走機能を持たせたものだ。ただ、ドローンのサイズなら可能なことも、人が乗る空飛ぶクルマでは不可能となることは多い。福澤氏は、SD-01の仕様や特徴に触れながら、それぞれでどのような工夫をしているのかを紹介した。

 SD-01は、地上の走行時はプロペラ部をボディーに格納するデザインを採用している。走行時の車体サイズは、軽自動車よりも少し大きい全長3600×全幅1700mmを想定。飛行時にはプロペラ部分を広げ、全幅は3100mmとなる。プロペラの数は4基に留めた。

 一般的に、ドローンではプロペラの数を6基もしくは8基にすれば、ホバリングなどの姿勢制御がしやすくなる。しかし、福澤氏は、プロペラの数を増やさない大きな理由を「カッコ悪くなるから」と語る。車体のデザインがいまひとつになるなら4つのプロペラで何とかするという強い意思が込められている。また、プロペラの数を増やせば、走行時の格納や車線の幅からはみ出すという面での問題もある。

2020年に有人飛行を目指す「SD-01」(クリックして拡大)

二重ローターやピッチコントロールなど、独自の工夫で課題にアプローチ

 ただ、小さなドローンと違い、大きく重い車体を4カ所のプロペラで安定させるのは難しい。有人の空飛ぶクルマでは、推力と安定を両立させる必要がある。

 通常のドローンは、各プロペラの回転数をコンマ1秒単位で変化させることで姿勢を制御しているが、車体が大きな飛ぶクルマでは応答性が悪くなる。福澤氏は「傾きを検知してから大きなプロペラの回転数を変化させても、姿勢を戻すまでに時間がかかる。結果、車体が落ち始めてしまう」と説明する。

 この問題に対し、SD-01では二重のプロペラを装備し、さらにプロペラのピッチを可変にすることで対応している。二重のプロペラは、車体の4カ所に装備するプロペラとモーターを上下に重ねている。上下のプロペラは回転方向が反対となる。これで回転による反力を打ち消しており、さらにプロペラのピッチ(角度)を変えることで風力を調整する。回転数とピッチの両方を制御することで、推力の調整を素早く行う工夫が使われている。

プロペラは二重に搭載されている(左)。ピッチコントロールユニット(右)(クリックして拡大)

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