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離陸する航空機電動化の時代――この転換期に日本製造業は飛翔できるかモノづくり最前線レポート(1/4 ページ)

航空需要が飛躍的に高まる中、航空産業が排出する地球温暖化ガス削減は急務だ。また、空飛ぶクルマといった新たなモビリティも具現化しつつある。これらの実現を支える航空機電動化技術は日本製造業を大きく成長させる起爆剤となりえる。

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 航空需要が飛躍的に高まる中、航空産業が排出する地球温暖化ガスの削減も急務とされる。また、新たな都市間モビリティとして電動の“空飛ぶクルマ”も現実となりつつあり、航空機の電動化技術は大手航空機メーカーに限らず業界を超えた産学各所で研究開発が進められている。

 「航空機電動化(ECLAIR:エクレア)コンソーシアム*)」は2018年12月21日、東京都内でオープンフォーラムを初めて開催し、電動飛行機の実現や電動化技術の開発に対する日本の政府や民間企業の取り組みを紹介した。本稿では、同団体が策定した航空機電動化のビジョンと技術ロードマップにスポットライトを当てる。

*)英文名称:Electrification ChaLlenge for AIRcraft (ECLAIR) Consortium

 ECLAIRコンソーシアムは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が中核となり2018年7月1日に設立された。同コンソーシアムには経済産業省やIHI、川崎重工業、日立製作所、三菱電機など、政府や航空、電機産業の民間企業が参画する。産学官連携によって、日本の航空機電動化の技術開発と、航空、電機産業間の連携を促進し、航空機電動化技術の国際競争力向上を目指すことが目的だ。*)

*)関連記事:電動飛行機の実現へ、JAXAらがコンソーシアムを発足(EE Times Japan)

開発スパンが長い航空機……高い環境目標の達成には一刻の猶予もない


JAXAの西沢啓氏

 ECLAIRコンソーシアムが描く航空機電動化のビジョンと技術ロードマップは、JAXA航空技術部門 次世代航空イノベーションハブ エミッションフリー航空機技術チーム長を務める西沢啓氏が発表した。このビジョンと技術ロードマップは同コンソーシアムメンバーのために策定され、今後も継続して更新される予定だ。

 ビジョンでは、2020年代に“空飛ぶクルマ”を始めとした小型VTOL(Vertical Take Off and Landing:垂直離着陸)機やMEA(More Electric Aircraft:推進系を除く装備品部分で電動化を進めた航空機)といった小出力用途で電動化の社会実装を進めること、2030年代に旅客機のうち席数が100〜200席程度のナローボディー機に電動化技術の適用範囲を広げること、2040年代に席数が200〜400席程度のワイドボディー機を含めたほぼ全ての航空機で電動化を適用し燃費を大幅に削減すること、など2050年に向けて航空機電動化を段階的に展開することを描いている。


航空機電動化を段階的に導入するステップ(クリックで拡大) 出典:航空機電動化コンソーシアム

 このビジョンの背景には航空業界が抱える大きな課題がある。航空需要は今後20年で約2.4倍に増加する見通しが立つ中、航空業界のCO2排出量は2050年に2005年比で半減するという目標が設定された。この目標について、西沢氏は「2050年まで現状技術から改善がなかった場合と比べて、約95%の排出量削減に相当することを意味しており、相当厳しい目標だ」との認識を示す。

 ジェットエンジンのさらなる高バイパス比化や機材運用の改善等、従来技術の改良によって、35%分のCO2排出量削減も可能と見込まれている。一方で、残り60%分は航空機電動化やバイオ燃料・水素燃料の利用等、抜本的な新技術で解決しなければならない。また、2021年以降より航空会社へのCO2排出権を規定する枠組みが開始される見込みで、航空各社はCO2排出による経営負担を避けるべくさまざまな方策を検討中だ。


CO2排出削減目標と各技術改善シナリオの比較(クリックで拡大) 出典:航空機電動化コンソーシアム

 西沢氏は、航空業界のCO2排出量削減について「目標クリアには新技術を本当に最大限導入しないといけない」としつつ、「航空業界は新技術の導入スパンが長く、古い機材が新しい機材に置き換わるまでに20〜30年程度必要だ。今から航空機電動化の研究開発に取り組まねば2050年の目標達成に間に合わず、航空業界の経営にも大きく左右するだろう」と語る。


航空産業の経済的価値と負担が増す環境対応コスト(クリックで拡大) 出典:航空機電動化コンソーシアム

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