今も昔も安全航行の要! 富士通が挑む「見張りの完全自動化」:船も「CASE」(1/4 ページ)
「IT企業がなぜ自動運航船に?」と不思議に思うかもしれない。しかし、異業種ゆえに海運企業や造船企業にはない観点から可能性に挑んでいる。とはいえ、なにゆえ富士通は、自動車の自動運転よりはるかに困難な分野に“異業種”の立場から取り組んだのか。先に紹介した技術報の公開から2年を過ぎた現時点におけるアップデートを中心に、自動運航船関連技術のプロジェクトに携わる担当者に聞いた。
2019年8月に掲載した記事「2025年に“日の丸”自動航行船が船出するために必要なこと」で富士通が自動運航船関連技術の開発に取り組んでいることを紹介した。富士通では自動運航船に関する取り組みについて同社社内技術報にまとめてWebサイトで公開している。
「IT企業がなぜ自動運航船に?」と不思議に思うかもしれないが、異業種ゆえに海運企業や造船企業にはない観点から可能性に挑んでいるのだ。とはいえ、富士通はなぜ、自動車の自動運転よりはるかに困難な分野に“異業種”の立場から取り組むのか。先に紹介した技術報の公開から2年を過ぎた現時点におけるアップデートを中心に、自動運航船関連技術のプロジェクトに携わる担当者に聞いた。
富士通が取り組む「海の画像認識システム」
富士通で自動運航船関連技術の開発に携わるのは、同社第四システム事業本部第一システム事業部第四システム部の野田明氏が率いるチームだ。さらに、同社共創ビジネスグループ共創イノベーション事業部マネージャーで海洋ビジネスを担当する藤本拓氏が連携している。2人はもともと別々に自動運航に関連した技術開発の案件に携わっていたが、自動運航船関連技術案件が富士通でスタートしたタイミングで共同して開発に取り組むことになった。
野田氏が取り組んでいたのは、洋上を航行する船舶を画像認識で検出する技術だった。“とあるクライアント”から要望のあったこの案件に、他の業務との兼務で3カ月ほど取り組み、観音崎から撮影した画像を基に浦賀水道を航行する船舶を識別する基本的な技術の開発に成功していた。
一方、藤本氏は船舶の航跡データを集積したビッグデータを活用して、衝突の可能性が高い海域を動的に求め、その海域を避けて操船する、もしくは衝突の高い海域の発生を防ぐ技術を導入した「海上交通マネジメントソリューション」の開発に携わっていた。既に実証実験をシンガポールで実施しており、藤本氏によると当局もその実験結果を高く評価したという。
富士通は、この2つのシステム開発に「港湾業務の生産性を高める運用技術」(港湾における積み下ろしと積み込み作業で発生する岸壁や荷を運ぶトレーラーが出入りするゲートの渋滞を解消する)を加えた3つの領域に取り組んでいた。
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