“永遠に不確実”なニューノーマル、未知の世界で何が起こるのか:ポストコロナの製造業IT戦略(3)(2/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考える本連載。第3回となる今回は、「ニューノーマル」として描かれるのがどういう世界で、企業としてどう備えるべきかについて解説します。
人間はだんだん使いものにならなくなる?
さらにもう少し思考を広げてみましょう。将来AI(人工知能)によって、全てが人を経由して行われていたことが、その領域が部分的にも置き換わっていくことが確実です。「人がやるべき理由」が見当たらない業務については積極的に機械に置き換えていく動きが加速します。
特にホワイトカラーと呼ばれるような人々の職務の中では、AIを含むデジタル技術の進化で置き換えられるものが含まれています。昨今「ベーシックインカム」の議論が持ち上がるのも、もしかしたらこのような背景があるかもしれません。さらにもっと先の将来を見ると、生産活動は機械に任せ、人は何も生産せず、ただ消費するだけの暮らしとなるのかもしれません。その時代に生きがいがどう変わっていくのかということも未知の領域だといえます。
かつてはマンパワーの大きさが生産力の大きさだった時代がありました。その時代には人口が多い国こそが強国でした。その後、産業化の時代には鉄の生産量が国力の指標となり、また消費が経済活動の原動力になった時もありました。そしていま、先進国を中心に人口増加率が落ち込み、途上国の人口増加によって全体がプラスになるような時代になりました。
世界人口の増加、食料技術の発達、ドルの量的緩和による供給の拡大によって、リーマンショック以降のグローバルエコノミーはここ十数年間経済拡大の恩恵を享受してきました。しかし、人口増加の停滞および減少トレンドになるとGDPの成長も停滞せざるを得ません。加えて、AI、人工知能で、これまでの仕事自体がなくなる可能性もあります。確かなのは、既に世界は新たなフェーズに入っていたことを、コロナ禍は人々に気付かせ、背中を押したという側面があるということです。
これらはコロナ禍以前から着実に進んでいたことです。そのため、コロナ禍が終息しても元に戻ることはないでしょう。短期的な対応は、中長期的な変化への入り口にすぎず、そこを乗り越えることでニューノーマルにたどり着けるのです。
「デジタル化」のトレンドは止まることはない
働き方の変化を例に、テレワークの定着や人々のライフスタイルの変化、それによって変わる世界について考えてみました。とはいえ、日本と欧米にはまだギャップがあり、まだテレワークのレベルは欧米より低いのは事実です。(グラフ参照)
ただ、速度の違いがあってもこれからの世界が変わってくることは間違いありません。筆者の周囲にも2020年に都心から郊外を中心とした生活に変えた人が何人もいます。こうした中長期的な変化は多くの人にとっては不可逆的な変化であり、物理的な場所などの概念を大きく変化させます。多くの企業にとってはこの変化こそがデジタルトランスフォーメーションの動機であり、原動力となるでしょう。
テレワークに出遅れている日本においても10年前と比べてテレワーク実施率は2倍くらい増えました。これからは「場所」に依存しない仕事、つまり「デジタル化」のトレンドを止めることはできないのです。このような中長期的な変化の時代にどのような対応をして生き延びるべきなのか。次回は「コロナ禍のリカバリー、ニューノーマル時代はデジタル」というテーマでお伝えしたいと思います。
筆者紹介
島田祥元(しまだ あきもと)
NTTデータ グローバルソリューションズ
ビジネスイノベーション推進部 世界戦略室 室長
欧米の先進国での経験を生かし、先端トレンドソリューションを日本で活用可能な視点で実践的に適応、支援を進めている。米国(7年)、英国(2年)でコンサルタントとして活動。外資系コンサルティング企業を経て、現職。米国、欧州、アジア、南米など多数の地域で、プログラムマネジメント、海外システム導入、オフショアチームマネジメント、グローバルAMO、買収フィージビリティスタディー・買収後業務・システムインテグレーション、ソフトウェアソリューション製品開発など、幅広い案件を手掛ける。
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