危機を生かせた企業の勝因は? 必要な3つのフェーズのアプロ―チとは:ポストコロナの製造業IT戦略(2)(1/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考える本連載。第2回となる今回は、COVID-19のような危機に際して、企業がどのようなアプローチで対策を進めていくべきかについて解説します。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考える本連載。第1回の「製造業にとっての『ニューノーマル』は何か、8つの特徴」では、COVID-19が製造業に何をもたらしたかを紹介してきました。
第2回となる今回は、COVID-19のような危機に際して、企業がどのようなアプローチで対策を進めていくべきかについて解説します。
マスクの市場規模が急拡大、コロナ禍での事業成長
現在では回復の兆しも少し見えつつありますが、COVID-19により需要の急減やサプライチェーンの混乱などで、赤字に転落する企業が相次ぐなど多くの企業にとっては厳しい経営環境が続いています。しかし、環境の大きな変化の中でその変化を捉え、成長している企業も少なくありません。
新たな環境で市場が急拡大したものとして分かりやすいのがマスクです。COVID-19の感染が最初に急拡大した2020年春ごろから数カ月は、マスクの品切れが続く状況が生まれました。一時期店頭から完全に姿を消し、高額転売が問題視される状況も生まれていました。夏ごろから品薄感が解消され始め、現在ではコロナ禍以前のような値段ではないものの、問題なく手に入るようになっています。
国内マスク市場でシェア上位のある日用品メーカーの場合、2020年上期のマスクの販売額は前年同期比で3倍に急増したといいます。もともとB社では生理用品が同社内では最大の売上高を占めていたそうですが、マスクの売上高が生理用品を上回り、ビジネスの構成を変える状況が生まれています。
また、マスクの品薄が続いている時期には、海外製のマスクが大量に輸入されました。しかし、品質にばらつきがあったため、消費者は安心して使える国産の製品を求めるという動きが生まれました。この時期にはいくつかの企業が異業種からマスクに参入する動きが生まれました。
代表的なのが家電メーカーのシャープです。2020年3月から国内の液晶ディスプレイ工場を活用してマスクの生産を始めました。そして、同年4月から自社サイトを通じて販売したところ、サイトにアクセスが集中して接続しにくい状況が生まれました。販売は抽選方式で行い、1日の生産枚数は60万枚、これまで累計約150万箱(およそ7500万枚)を売り切り、単純計算で半年間のマスク売上高は実に45億円以上にもなっています。
その一方で、中国や東南アジアから輸入されたマスクの国内在庫は大きく積み上がりました。品質が悪く、価格競争力を失ったマスクは行き場を失ったのです。
マスクはコロナ禍で需要の増大という影響を一番大きく受けた製品だったのは間違いありません。しかし、マスクの供給量が十分に回復した後も、メーカーによっては抽選でなければ購入できないくらいの人気を維持しているところがある一方、売れない在庫を抱えている企業生まれています。
製造業としての「ニューノーマル」を考える上で、この売れる製品と売れない製品の「格差」は、一体なぜ生じたのかは考えなければならないポイントです。あらためて考察してみましょう。
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